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Vol.2 (1981/1[011])

<国内情報>
溶血れんさ球菌の分布調査


東南アジア国際協同研究(国内実行委員長,順天堂大学 塩川教授)の一環として,52年10月より年2回(秋・冬),山間部および海岸部小学校児童220名を対象に咽頭における溶れん菌の保有状況を調べている。現在4年目に入ったところで,データーの解析は未だ終っていないが,要約すると概要次のとおりである。

調査時期により14%から52%と保有率にかなりの変動が見られた。最も保有率の高かったのは53年1月で,その頃インフルエンザが流行し,学校閉鎖が行われた直後で,インフルエンザと平行して溶れん菌の流行があったものと思われる。

対象校および調査時期における保有率を比較すると一般に山間部,冬期に高い傾向があるが,顕著な差は見られなかった。

菌型について見ると,55年2月までの流行菌型は数種類に限られていたが,55年10月の調査において,菌型分布に若干変動が見られ,特に新しい型(T6,T13)の台頭が目立った。

53年1月,最も保有率の高かった時期の主要菌型としてT4,T12,T1,T28等があげられるが,菌型分布はT4が圧倒的に高く,そのほか保有率の低かった時期の菌型分布ではT4よりもむしろT12の方が高い分布を示していた。従って保有率の高低はT4の影響によるものと考えられる。

また,3回以上同一菌型を保有していた児童の菌型はT12が圧倒的に多く,T4はほとんど見受けられなかった。

以上のことからT4は伝播性が強く,一過性に終ることが多いが,T12は定着性の強い菌型と思われる。

最後に私共の苦い経験談を紹介し,参考に供したい。

検体採取は現場で2組に分れて行っているが,ある時ベテラン技術者の1人が急に来られなくなり,止むなく急場しのぎに未経験者を教育し,咽頭粘液を採取したところ,ベテランと未経験者との間の検出率に大きな差を生じた。直接法で39%と1.7%,増菌法で47%と16%。勿論後者が未経験者の採取によるもので,検体採取の巧拙によって検出率に差が生じたことは明らかである。検体採取が如何に大切かを如実に物語った一例である。



大分県公害衛生センター 朝来義雄





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