|
昭和41年度から府下における溶レン菌の流行菌型の調査を続けてきた(表)。41年度は集団発生1例を調査しただけで主要菌型は6型であった。42年度以降調査件数を次第にふやし46〜51年度は大気汚染影響調査時などの機会に幼稚園児,小学生,中学生の保菌検索に重点をおき同一人について繰返し調査し,52年以降は患者材料からの菌検出に重点をおいている。42年度以降は53年度を除いて12型菌が最も多く次いで1型菌と4型菌が毎年平均して多い。53年度は或る乳幼児施設で4型菌による集団発生があったため12型菌との比率が逆転している。6,18,22,B3264型菌は増減しながらほぼ毎年検出されている。3型菌は47〜51年度に多く検出されたが52年度以降55年9月まではみられない。54年度はB3264型菌が12型菌に次いで多くなっているが,この大部分は上述の53年度4型菌が流行した同一施設の乳幼児と一部の職員から分離されたものである。
本年度(4〜12月初旬)もやはり12型菌が圧倒的に多く次いで4,1型,更に28,B3264,22,6,18型など例年通りであるがこれまで府下では分離されなかった13型や8型が秋の患者由来株にみられる。最近患者材料からの検出率が増加しており今冬は溶レン菌感染症が流行しそうである。
A群溶レン菌の保菌率は集団により異なりこれまでの調査では3〜56%であったが,平均して非流行時の子供の保菌率は10%前後,流行時は50%前後以上を示し,30%前後の場合は小流行の前後のように思う。しかしある集団では56%の保菌率にもかかわらず無症状に経過した例もあった。また幼稚園(約120名)について1年6ヶ月の間に隔月毎10回,同一人を追跡調査したとき一度でもA群溶レン菌を排菌した子供が約60%に達し3回以上同一菌型(主に12型と1型)排菌者が約8%という例もあった。小学生(約380名)の集団では1年9カ月の間に3回検索して一度でも排菌しているものが31〜52%みられた。感染症という形で目立った流行像を示さない集団でもこのように溶レン菌がまん延している場合があり,続発症予防のための適切な指導が必要と思われるが必ずしもそうなっていないのが現状である。
薬剤感受性ではPC,CERに対してはこれまでの分離菌はすべて感性である。最近の主流行菌型である12型菌は約90%がTC耐性,約80%がEM耐性,約30%がCP耐性で,EM耐性菌はほとんどTCにも耐性である。4型菌もすべてTC耐性,約25%がEM耐性である。このことから溶レン菌感染症の治療にはPC−Gが腸内細菌叢への影響を比較的少くして最も適しているように思う。
大阪府立公衆衛生研究所 原田七寛
表
|