|
ロサンゼルス−1980年8月1日から10月17日に至る期間,ペニシリナーゼ産生リン菌(PPNG)による149の感染例がカリフォルニア州ロサンゼルス郡で報告された。これは1976年3月から1979年12月までの11例,1980年度のはじめの7ヶ月における26例に比較して大変なふえ方である。
郡の27保険区のうちの21から報告があったが,最近の大部分の症例はロングビーチ,コンプトン,南区,南東区,南西区,イングルウッドの6区から発生している。ロングビーチ区をのぞけば,これらの地区はこれまでも非PPNGリン菌による感染の多かったところである。8月1日以来の女性患者68名のうち18例(26.5%)が急性卵管炎の症状を訴えていた。
米国の大部分の地区のPPNGとはちがって,1980年度のロサンゼルス郡の症例は,その6%のみが米国外でかかったものである。のこりは郡住民間で持続的に伝染していったもので,中には単一の感染連鎖で6名の患者のでている場合もある。
3つの主要な地区で集中的な対策がとられた。まず,診断,治療,PPNG報告に関する指示勧告が郡のすべての保健婦(夫)に通達された。第二に;公衆衛生検査機関は,治療前後における分離株のβ−ラクタメイス産生試験を開始した。すでにPPNGとわかっている症例との性的交渉者由来株でのテストをのぞいて,1,797のテストのテストが9月中旬以来なされてきた。このうち34テスト(1.9%)が陽性であった。イングルウッド保健地区試験所でなされたテストにおいては,治療前分離株の3.7%がPPNGであった。このような検査計画がとられるように郡のすべての検査所長に勧告されている。第三に,PPNG患者のすべてと面接し,性的接触の所在をあきらかにする努力がなされた。そして8月1日以降149のPPNG患者の97%と面接がなされた。接触追跡調査の結果,治療にまわされた症例の占める率は,8月12日には20%であったものが,9月と10月には43%に上昇した。
編集部ノート:上述のようにロサンゼルスにおいてPPNG感染の地域フォーカスができ上ったこと,また,タコマ,ワシントン,ニューーヨーク等の市において最近PPNG感染例の増加している事実は,継続的なサーベイランス活動の必要性を強調している。CDCは治療後のリン菌培養に際して,β−ラクタメイス産生能をしらべるようすすめている。
PPNGのひろがりを防ぐためにはすでにCDCがそのガイドラインで示しているようなスペクチノマイシンの使用が依然として適切である。しかし,さらにPPNGのひろがりがみられる特定の地区においては,合併症を伴わないすべての感染者の初回治療を包含して,スペクチノマイシン使用の拡大が必要となる。このような治療法の変更は,一地区のリン菌分離株の5%以上がペニシリン耐性になったときにとられるべきである。
(MMWR,1980,Vol.29,No.45)
|