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石川県では小児のいわゆる「かぜ」の病因を探るべく,近接の金沢赤十字病院小児科の協力のもとに,1972年以降毎年500人前後のかぜ患児を対象に,咽頭ぬぐい液からのウイルス分離を試みているが,1980年には504人から165株のウイルスを分離した(分離率31%)。このうちアデノウイルスは61株あり,中でも4株は36株と優勢を占め(表1),1月から9月にかけて分離され,この期間に流行があったことが示唆された。この4型は前年の1979年に10株分離されているのを除けば,過去に分離経験はない。表1から,1,2,5型はほぼ毎年のように,3,6型は1〜2年の流行閑期をはさんで分離されているが,4,8型では流行周期が長いような印象を受ける。このようにアデノウイルスの流行は型によって年次的な推移がみられるが,月別では特に季節的な集積性はみられないようである。
1980年にアデノウイルスが分離された61人の臨床症状を表2に示した。全員にみられた上気道炎に付随して発熱,下痢,下気道炎(気管支炎,肺炎)がそれぞれ84%,33%,16%にみられた。他に注目すべきは血尿で,4型が分離された患児3人にみられており,尿からのウイルス分離がなされていないため症状とウイルスとの因果関係は不明であるが,他のウイルス分離例にこのような血尿の例はみられていない。3人の患児は4才女子2人(2月5日と26日採取)と7才男子(7月8日採取)で,症状は共通して発熱,上気道炎,血尿であった。
アデノウイルスが分離された患児の年令を61人についてみると,1,2,5,6型はほとんど4才までに分離されているのに対し,4型は0才から10才までの各年令層からほぼ均等に分離された。
なお,アデノウイルス4型は1980年9月以降は分離されていない。
石川県衛生公害研究所 木村晋亮
表1.かぜ患児からのアデノウイルス分離状況
表2.患児の臨床症状と分離ウイルス型(1980)
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