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Vol.2 (1981/4[014])

<国内情報>
1980年7,8月岡山県で集団発生したアデノウイルス4型による咽頭結膜熱について


咽頭結膜熱は遊泳用プールを媒体として爆発的に発生することが多く,その原因は主にアデノウイルス3,7,14型感染であるといわれている。最近,アデノウイルス4型もプール媒介性咽頭結膜熱の集団発生をおこすことをD但ngeloが報告している1)。わが国での4型による本症発生例は少ないが,甲野らは最近の本型感染症の増加傾向よりその発生を警告している2)。

1980年7月25日から8月14日の間に岡山県倉敷市の1小学校で,プール媒介性と考えられる咽頭結膜熱が集団発生した3)。全校生徒を対象にしたアンケート調査の結果,7月23日からプールの閉鎖された8月1日まで午後約3時間の水泳特別訓練に参加した生徒114名(特訓グループ,4〜6年生の約半数)のうち,発熱,咽頭痛,眼症状(目が赤くなったと回答,この内74%は医師により結膜炎と診断)のいずれかまたは2つ以上の症状を有した患者は96名(84.2%)であり,患者発生は8月2日の21名をピークとする一峰性の曲線を示した。同期間中,特訓を受けず同一プールで午前中約1時間の水泳を行った生徒376名にも上記3症状のすべてを有する患者が8名認められた。一方,当校プールで泳がなかった生徒24名には発生がなかった。

特訓グループの学年・性別での罹患率に有意差はなかった。自覚症状は発熱が最も多く(95.8%),有熱者の87%が最高体温38.6℃以上であり,37℃以上の有熱期間は平均4.6日であった。食欲不振,頭痛,咽頭痛,眼症状が58〜73%,腹部症状(腹痛,吐気,下痢)および呼吸器症状(鼻汁,咳嗽)が24〜31%に認められた。

特訓グループの患者10名中8名(咽頭拭い液10件中3件,糞便8件中5件)からヒト胎児皮膚細胞を用いアデノウイルス4型を分離し,本発生例の原因ウイルスと推定した。

一般住民の本型分離株に対する抗体保有率は極めて低く(表1),今後もプールを媒体とした本型による咽頭結膜熱発生の危険性が強い。遊泳用プールでの感染防止のため,水質基準(遊離塩素濃度0.4−1.0ppm)厳守の啓蒙に努力すべきと考える2)。

4) D'Angelo, L. T, et al., J. Infect. Dis., 140,42−47,1979.

5) 甲野礼作他,日本の眼科,51,413−418,1980.

6) 上羽 修他,公衆衛生,投稿中.



岡山県環境保健センター 上羽 修


表1.一般住民のアデノウィルス4型分離株に対する中和抗体保有率(≧4)





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