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昨年から今年にかけて,東北6県の各地で風疹が相次いで発生しているが,この発生経過の概要は54年12月〜56年2月,1468名。内,56年2月,367名で,流行開始の気配を示しつつある。特に,山形では,昨年2月から天童市で発生(山形衛研でウイルス学的,血清学的に確認)しはじめ,その輪は逐次全県に拡大し,先月(2月)1ヶ月間だけでも280名の患者(主に幼稚園児と小学校低学年児童)が発生していることからみて,すでに流行期に突入したものと考えられる。
一方,その他の5県でも漸増しているが,宮城では,今年1月になって気仙沼の1小学校での小流行(宮城衛研),最近の仙台市での発生例−成人や妊婦も罹患−(仙台市衛研),また,秋田では,同じく今年2〜3月に,2名の患者−内1名は妊婦−(秋大医微生物)が,それぞれ血清学的に風疹と確認されている。
このように,東北6県内では,風疹の火種が各地に飛散しつつあり,その流行が懸念されている。このようなことから,昨年末,東北6県防疫研究会(会長石田名香雄)では,各県が1980年に行った免疫保有調査成績(検体総数2,306)を持寄って,風疹がいつ,どの程度の規模で流行するのかを予測し,この流行再来に対処している。その流行予測の概略を紹介すると,下記の如くである。なお,この研究会は昭和50年に発足し,その日常活動として,東北6県防疫月報(事務局秋田衛研)を毎月発行し,東北地方に発生している感染症情報を一元的に,迅速に交換し合っている。
東北地方の風疹流行予測(1980年12月)
(1) 東北地方における患者発生状況(省略)
(2) これまでの流行直前の免疫保有状況(省略)
(3) 1980年東北地方の免疫保有状況(省略)
(4) 流行予測
以上のことをベースにして,1981年と1982年の流行予測を次のように行ってみました。
(i)1981年に流行する確率は55%と予想。しかし,流行しても,その中心は幼稚園や保育所,次いで,小学校1〜2年と推定されますので,流行規模は小−中型と予想されます。また,流行しない場合でも,各地域への火種の拡散が漸次進行していくものとみられます。従って妊婦は要注意。特に幼稚園児や保育所児がいたり,或いは接触する機会の高い20才台の女性の免疫保有率はこれまでの流行時より約10%低下しているので,予め,免疫保有検査を受けておく必要があります。各県とも衛研か大学などで実施しておりますので,お問合せ下さい。
(ii) 1982年(前回流行末期から5年目)に流行が起きる確率は80%以上。感受性者は1981年より蓄積するので,流行規模は中程度と予測されます。中心は幼稚園,保育所,小学校の低−中学年。勿論,(i)と同様に妊婦や妊娠希望者は厳重に注意。
(iii)附帯事項
(イ) 免疫保有状況は地域によって異なりますので,予測時期のズレに注意してください。
(ロ) 同胞(家族内)感染が結構ありますので,上記以外の年令層での罹患も当然考えられます。
(ハ) 前回の流行期から5年しかたっていませんので,保有抗体価レベルがかなり高いです。特に20才台の女子で256−512倍の高抗体価を示すものがありますので,風疹感染の疑われる妊婦の検査・診断時には誤判定しないよう,御注意下さい。必ずペア血清で抗体価の変動をみるとか,或いはIgM抗体の測定を行うとかした方がよろしいでしょう。
東北6県防疫研究会(東北6県防疫月報)
(文責 森田盛大)
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