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昭和56年2月14日,わが国で初めてオーエスキー病の発生が確認された。発生場所は山形県東田川群の1養豚農家で,当時(2月12日現在)種雄2,繁殖雌44,肥育280,子豚,めん羊が飼養されていた。1月下旬以降に生産された子豚,12腹,119頭中87頭が本病により死亡(死産32,病鑑殺9を含む)した。2月14日家畜衛生試験場で病性鑑定の結果,次の成績から本病をオーエスキー病と決定した。1)ウイルス分離(脳,扁桃材料)陽性,2)中和試験(母豚,本病の発生前に生産された子豚等10頭)全例陽性,3)蛍光抗体法(脳,扁桃)陽性,4)病理組織(脳,肝核内封入体等)陽性。畜産局衛生課では直ちに山形県畜産課に対し,発生農場の家畜の計画的自衛処分を指導する一方,最近同場へ導入された豚の関係農場についての立入検査と血清送付を関係県に対し指示した。現在までのところ周辺地域の養豚農家の立入検査,関係各県における立入検査で異常は認められていない(家畜衛生週報,No.1640,p.65,昭和56年)。
オーエスキー病はヘルペスウイルス〔Suid(alpha)-herpesvirus1〕によっておこる急性伝染病で,別名をPseudorabies(仮性狂犬病),Mad'itch, Infectious bulbar paralysisなどという。仮性狂犬病というのは感染動物(豚以外)が非常に痒ゆがり,気違いのようになるからである。しかし人や動物に噛みつくことはない。感染動物種は豚,牛,めん羊,犬,猫,ミンク等で,米国,ヨーロッパで広く発生がみられている。本病に感染した場合成豚は大部分が無症状で耐過するが,子豚は致命率が高い。豚以外の動物では激しい局所性のそう痒症を示し,致命率が高い。
今回の発生では子豚では元気消失,毛ヅヤの消失,乾性目ヤニ,軽度の便秘が認められ,末期には沈うつ,けいれんを起こし,多くは生後1〜15日令の間に1〜2日の経過で死亡している。白血球減少,核の左転が認められたものもある。剖検で肺,肝,脾の出血,腎の点状出血(密発),リンパ節の辺縁性出血がみとめられた。母豚では38〜41℃の発熱がみられたものがあったが,他は著変がみられなかった(上記家畜衛生週報)。
人の感染は非常にまれであるが報告されている。局所性のそう痒症(Pruritus)をおこす。ほとんどが実験室感染である。これまで死亡はみられていない。
予研 今泉 清
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