|
1980年〜1981年のわが国におけるインフルエンザの流行から分離されたウイルスは表1のごとく,A/ソ連型のH1N1型株は635株,A/香港型のH3N2型株は122株,B型株は166株であった。
1979年〜1980年の流行はH1N1型ウイルスの流行の最中に1980年1月からA/香港型株とB型株の流行が始まり,3種類のウイルスの流行が認められた。
B型の流行は1973年〜1974年と,1976年〜1977年にかけて大きな流行が認められ,1980年1月になり再び流行が認められた。B型ウイルスの罹患者の大部分は保育所,幼稚園,小学校の低学年生であった。A/香港型株の流行も同様に,小学校の低年令層以下と成人層にある程度の流行がみられた。A/ソ連型の流行は小,中学生の抗体の低い生徒と高校生が多く罹患する傾向がみとめられた。
保育所,幼稚園,小学校,中学校のインフルエンザ様疾患週別発生状況は図Tの如く,1979年〜1980年の罹患者数に比べ1980年〜1981年の流行ではやや罹患者数が増加している。
1980年〜1981年の流行から分離された株の抗原分析を実施した結果,A/香港型株はA/バンコク/1/79株と同型のウイルスであった。A/ソ連型株は約10%位に表2のごとく,抗原変異のみられる株が分離されている。B型株はワクチンに含まれているB/シンガポール/222/79株と同型のウイルスが分離されている。アメリカのCDCのDr. Kendalからの連絡で諸外国で分離されているA/ソ連型株の中に約10%位に抗原変異がみられるA/イングランド/403/80型株が分離されていることがわかった。この株は日本で分離されたA/兵庫/5/81株とA/栃木/9/81株と同型のウイルスであった。更に日本の流行株の中に,より抗原変異の大きいA/山梨/26/81型株とA/福岡/C−9/81型株が分離されている。この株はフェレットの感染血清ではかなりの抗原変異がみられるが,ワクチン接種前と1ヶ月後の人血清のHI抗体価で比較すると,ワクチン製造株であるA/熊本/37/79株と較べ,あまり差異はみとめられない株である。
予研 武内安恵
表1.インフルエンザ株分離数 1981年4月報告分まで
図
表2.Hemagglutination inhibition reactions of H1N1 type Influenza viruses isolates in Japan(1981)
|