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オレゴン−1980年12月22から1981年2月22までの期間,オレゴン州の5つの郡で下痢患者の便から計91のCampylobacter fetus subsp. Jejuni 分離の報告があった。うち52名(57%)については発症前に生ミルクを飲んだ事実があった。これら52名の患者家族の他のメンバー76名も生ミルクを摂取し,うち25名(33%)も下痢を来たしたが,飲まなかった他の19名のメンバーはすべて下痢をおこさなかった。
生ミルクが菌の伝播体であるという仮説を検討するため,2つの患者一対照調査が実施された。最初の調査では,ひとつの郡から電話帳から無作為に70の対照家庭をえらび,その57家族(81%)が面接聴取に応じた。そのうち1家族のみが問題のブランドの生ミルクを摂取しており,これは患者家庭15のうち11が同一ブランドを飲んでいたのと比較される。その1家族のメンバーのうち生ミルクを飲んだ3名は症状を来たし,飲まなかった1名は異常なかった。以上のカンピロバクター症例とペット,養鶏,牧畜,生卵,生肉,未処理地表水,他の下痢患者との接触,海外旅行などとの間には相関はみられなかった。次の調査では,28名の患者と年令の対応する対照をえらび,それらの15組について調査したが,ここでも生ミルクとの関係が強く支持された。
カリフォルニア−1981年1月23日,カリフォルニア州食品農業部(DFA)は附属試験所が瓶ずめミルクからSalmonella saint-paulを検出したため,州衛生当局(DHS)にすでに認可販売ルートに乗った関連食品の収去を命ずるよう要請した。これとは独立的にサンディエゴの郡衛生研究所は,患者のもちこんだ同一表示の開口されたミルク容器から同じ血清型のサルモネラを分離した。同時に,4ヶ月の母乳養育の後に生ミルクを飲みはじめて2週で発病した小児からS. saint-paulを分離している。
なお,米国では認可されている酪農生ミルクから12種の血清型のサルモネラが分離されているが,このうちヒトの流行と関係のあったものはS. dublinのみであった。
編集部註:1979年と1980年において,米国17州から報告されたS. bublin症例をしらべてみると,32例中11例に生ミルクを飲んでいた既往がある。結核菌とブルセラとちがって,サルモネラ感染は酪農獣の中に依然として存続している。健康牛の10%ほどはS. dublin保菌獣であり,不完全なpasteurizationによる牛乳のサルモネラ汚染は問題であり続けている。また,健康牛の60%はカンピロバクターを糞中に排泄しているが,この菌はpasteurizationによって生ミルクから不活化することができる。
(MMWR,Vol.30,No.8,1981)
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