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Vol.2 (1981/6[016])

<国内情報>
Yersinia pseudotuberculosisによる集団発生


昭和56年2月11日から2月21日までの10日間,岡山県倉敷市の某小学校(生徒数883名)に泉熱様症状を示す疾病が発生し,校医より管轄保健所に届出があり,保健所及び衛生部は主に疫学調査を,岡山県環境保健センターは検査業務を担当した。なお,血清検査は現在一部継続しており,その結果を併せて最終的患者数を決定する。有症患者数134人で,学年別発生率は平均15.1%で2年生が最も高く20.7%,6年生が最も低く6.3%であった。患者発生のピークは発生後2〜3日で最高に達し,以後漸減している。症状は発熱(一峰性,二峰性のものが主で三峰性のものもある),発疹,腹部症状を主徴とし,下痢は比較的軽微で軟便程度であり,苺舌が特徴的であった。発疹はそう痒感のあるものもあり,後日落屑するものも僅かに認められている。また,同胞,家族間の2次感染の明らかなものは認められていないようである。これらの患者便29名の菌検索を行い,18名よりYersinia pseudotuberculosis VA型を検出した(型別抗血清は鳥取大学農学部坪倉操教授の御好意により入手)。また,患者32名の回復期血清は患者由来株に対し全て160倍以上の抗体価を示した。その他の病原細菌,ウイルスについても検査を行ったが,39名の咽頭ぬぐい液中1名よりエコーウイルス27型を分離した。本ウイルスに対する血中抗体価に有意の上昇は認められなかった。その他の病原微生物は全て陰性であった。

その他食品(21例),ねずみ(2匹)等の検査を行ったが,原因菌は検出されなかった。この事例に関連して岡山県内某病院医師は泉熱の原因菌として新聞に発表しており,私達は当初よりこの事例に原因物質の検索に参加し詳細に調査して来たが,従来いわれてきた泉熱と本菌感染症の症状での共通点は多々ある事は認められるが然し,Y. pseudotuberculosis感染即ち泉熱と決定するにはなお多くの疑問点があり,今後慎重に究明する必要があると考える。この点については後日詳しく報告したい。



岡山県環境保健センター 井上正直





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