HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.2 (1981[増刊号])

<特集>
感染症サーベイランス事業検査指針


 1.病原体検索の対象疾病

 感染症サーベイランス事業において,病原体検索の対象となる疾病は,(5)百日せき様疾患,(6)溶連菌感染症,(7)異型肺炎,(8)乳児嘔吐下痢症,(9)その他の感染症下痢症,(10)手足口病,(11)ヘルパンギーナ,(14)咽頭結膜熱,(15)流行性角結膜炎,(16)急性出血性結膜炎,(17)髄膜炎(細菌性,無菌性),(18)脳・脊髄炎であり,検査定点医療機関では,これらの疾病の患者から必要に応じて,細菌学的及びウイルス学的検査のために検体を採取すること。

 なお, (1)麻しん様疾患,(2)風しん,(3)水痘,(4)流行性耳下腺炎,(11)伝染性紅斑,(12)突発性発しんについては,主として臨床診断によること。

 2.検査材料及び病原体

 病原体検索のために採取すべき検査材料及び対象となる病原体を以下表に示す。

 3.検体採取法

 検査定点医療機関において患者から検体を採取する場合は,次の方法によること。

 (1) 糞便

○排泄直後の糞便を採取すること。

○細菌学的検査用には,抗生物質投与前の糞便を採取するよう心懸けること。

○ウイルス検査用には約2g(2ml),電子顕微鏡法による検査のためには5〜10g採取することが望ましい。

○細菌学的検査のためには,材料をキャリー・ブレイアー培地又は1%食塩加グリセリン保存液に採取すること。

 (2) 咽頭うがい液

○5〜10%脱脂乳又は生理食塩水などで咽頭の奥でよくうがいさせる。生理食塩水を用いた時は,吐き出させた後に等量の普通ブイヨン,0.5%ウシアルブミン加veal infusion broth又は0.5%ゼラチン加Hanks液を加える。

 (3) 鼻咽頭ぬぐい液

○滅菌綿棒で鼻腔あるいは咽頭をよくぬぐい,滅菌容器に分注した保存液(0.5%ウシアルブミン加Veal infusion broth又は0.5%ゼラチン加Hanks液約2ml)にその綿棒を浸し器壁でよくしぼった後,棒をとり除いて密栓すること。

 (4) 結膜ぬぐい液

○眼瞼結膜を綿棒で強くこすり,前記の鼻咽頭ぬぐい液と同様に処理すること。

 (5) 水泡内容液

○水泡又は膿泡の表面をアルコール綿等で消毒し,毛細管又はツベリクリン注射器などで局所を突き穿し内容を吸引するか,又は局所を綿棒でこすり,前記ぬぐい液と同様に処理すること。

 (6) 髄液

○無菌的に1〜5ml髄液を採取して,滅菌容器に入れ密栓すること。

 4.検体の保存法

○短時間(2〜3時間)の保存であれば,氷冷(冷蔵庫)して保存すること。

○長時間の保存であれば,−25℃以下で凍結保存すること。

○キャリー・ブレイアー培地又は1%食塩加グリセリン保存液に採取された糞便は,凍結してはならない。採取当日検査に供するのが望ましいが,止むを得ず検査が遅れる場合は氷冷(冷蔵庫)保存すること。

○ウイルス材料については,ドライアイスアセトン又はドライアイスアルコールで急速に凍結した後,ドライアイス又は超低温庫(−70℃以下)で保存することが望ましい。

 ドライアイス使用の場合は,CO2ガスが容器内部に浸入するのを防ぐため密栓し,ビニールテープでシールすること。

 5.検体の搬送法

○検体はできるだけ速やかに検査機関に搬送すること。

○密封及び凍結可能な容器を用い,搬送用コンティナーに入れ,前記の保存温度条件にしたがって,冷却又は凍結して搬送すること。

○凍結の場合は,ドライアイス又は寒剤(例えば氷75%+食塩25%)を使用すること。

(注)1.凍結検査材料は,保存,搬送の間に融解しないようにすること。

2.ウイルス材料取扱の詳細については,下記を参照すること。

厚生省監修微生物検査必携ウイルス・リケッチア検査 第2版 1978年日本公衆衛生協会

 6.検査情報報告書の記入要領

 微生物検査情報システム化に関する研究班編著「病原微生物検査情報報告書記入の手引き」を参考のこと。









前へ
copyright
IASR