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フランス−1979年に計2036の髄膜炎菌性の脳脊髄膜炎が報告された。これは届出伝染病のひとつであって,保健省は1502の疫学サーベイランス報告用紙をうけとった。しかし,そのうち181は診断が不的確であったり,あるいは適切な情報を提供するものではなかったので除外され,残り1321についてのみ分析がなされた。
694(53.1%)が男性であり,612(46.9%)が女性で,15は性別の記載がなかった。症状経過は1273例ではっきりしており,死亡例は88名(6.9%)であった。症例の半数(690/1303)は5才以下で,1才未満児の発症の頻度が最高であった(194/1303で 14.9%)。季節分布では冬が40%,春が30%であった。感染児は家族内生活児が大部分であったが,その他は昼間は保育所にあずけられる小児であり,そして年長児は学童であった。夏期においては,大人の髄膜炎菌がキャンプ地や戸外のレクリエイションセンターなどでみられている。18才から23才の若い男性の患者83例のうち半数(41例)は軍隊服務者であった。9例は隊商として各地を巡回する商人の中から報告された。病院内での感染例は1例もなかった。
これら髄膜炎菌感染の多くは,はっきりした関連のない単発例としてあらわれた。集発(同時発生または続発生)は32事例みられたが,続発例も一般に1〜2例にすぎなかった。比較的大きい集発例は2事例であって,そのひとつはMayenne地区のもので同一学校において7名の患者が2月から3月にかけて発生し,その一部は同一家族であった。他のひとつはBrestにおけるもので,6症例が同一週に発生したが,それらの間に何らかの関連を見出すことはできなかった。
細菌学的特徴−脳脊髄液からの菌検出が試みられ,97%の症例で陽性であった。血液培養は687例中216例において,また,咽頭材料培養では445例中103例で菌陽性であった。いくつかの病院では,血中あるいは脳脊髄液中の髄膜炎菌抗原の検出に最新の技術を用いた。血清型の群別を1112株について実施し,968(87.0%)がB群,39(3.5%)がA群,63(5.7%)がC群であった。他の株はフランスでは極めて稀な群であるDやW,あるいは群別不能であった。
一般的コメント−1979年におけるフランスでの髄膜炎菌感染は前年度と同じくエンデミックな形をとっていた。届出はいまだ不充分であるが,このエンデミックが進行しているとは思われず,人口10万当たり4のレベルの発症率である。疫学的特徴は従来のままで,冬と初春に子供に多い。続発例は一般に稀である。B群による症例が圧倒的に多いことが注目される。B群の頻度は1975年の75%から1978年の80%,1979年の87.0%と持続的に上昇してきた。それに反して,A群の頻度は1969年から1974年にかけて上昇して24%になったにもかかわらず,1975年以後は減少して1978年にはわずか5%,1979年には3%となってしまった。
二次感染を防ぎ,また,周囲の不安をのぞく目的で予防法がとられた。実際には役立たないのであるが,260事例で消毒が実施された。保菌者調査が近接者を対象としてなされたが,はっきりした結果に到達しない。予防内服が予防法として一番頻繁に用いられ,サルファ剤よりもスピラマイシンがえらばれた。
予防接種は,それが有効なA群,C群の頻度が小さいため用いられなかった。そしてまた,A群,C群による二次感染も報告されていなかった。
(WHO,WER,1981,56,No.29)
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