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第1.目的
近年,公衆衛生の向上及び生活環境の変化等により各種感染症の発生状況は著しく変貌し,法定伝染病などは激減したが,反面,風しん,手足口病,伝染性紅斑など従来余り表在化することのなかった疾病の流行が,最近,社会的に問題視されるようになってきたことにかんがみ,これら感染症に対する地域的および全国的な監視体制を設け,患者の発生状況,病原体の検索など流行の実態を早期かつ的確に把握し,その情報を速やかに地域に還元することにより,医療機関におけるプライマリ・ケアの推進に資するとともに,予防接種,小児集団生活の管理,衛生教育など適切な予防措置を講じ,もってこれら感染症のまん延を未然に防止することを目的とする。
第2.対象疾病
この事業の対象とする疾病は,次のとおりとする。
(1)麻しん様疾患,(2)風しん,(3)水痘,(4)流行性耳下腺炎,(5)百日せき様疾患,(6)溶連菌感染症,(7)異型肺炎,(8)乳児嘔吐下痢症,(9)その他の感染性下痢症,(10)手足口病,(11)伝染性紅斑,(12)突発性発しん,(13)ヘルパンギーナ,(14)咽頭結膜熱,(15)流行性角結膜炎,(16)急性出血性結膜炎,(17)髄膜炎((a)細菌性,(b)無菌性),(18)脳・脊髄炎
第3.実施主体
実施主体は,国,都道府県及び指定都市とする。
第4.実施体制の整備
情報処理の総合的かつ円滑な推進を図るため,次の体制を整備するものとする。
1.感染症情報センター
(1) 中央感染症情報センター(厚生省公衆衛生局保健情報課)
中央感染症情報センターは,地方感染症情報センターから通報される患者発生情報及び国立予防衛生研究所から通報される検査情報を速やかに地方感染症情報センター等に還元するための中心的役割を果たすものとする。
(2) 地方感染症情報センター(都道府県・指定都市衛生主管部局)
地方感染症情報センターは,地域における患者発生情報及び検査情報を収集し,全国情報と併せてこれを速やかに医師会,保健所等関係機関に還元するものとすること。
2.定点
都道府県及び指定都市は,患者発生情報及び病原体の分離等の検査情報を収集するため,患者定点及び検査定点をそれぞれ医療機関の中から選定すること。
3.感染症情報対策委員会
(1) 中央感染症情報対策委員会
中央における事業の的確な運用を図るため,国に小児科,内科,微生物学,疫学等の専門家で構成される中央感染症情報対策委員会を設置し,同委員会に情報の解析評価を行うため解析評価小委員会を設ける。
(2) 地方感染症情報対策委員会
地方における事業の的確な運用を図るため,都道府県及び指定都市に小児科,内科,微生物学,疫学等の専門家(10名程度)で構成される地方感染症情報対策委員会を設置し,同委員会に情報の解析評価を行うため解析評価小委員会を設けること。
第5.事業の実施
1.定点の選定
(1) 患者定点
対象疾病の患者発生状況を地域的に把握するため,医療機関を患者定点とし,次の点に留意して選定すること。
ア.人口及び医療機関の分布等を勘案してできるだけ地域及び県(市)全体の疾病の発生状況を把握できるよう考慮すること。
イ.対象疾病のうち,(1)から(14)までに掲げる疾病については,小児科及び内科の医療機関(主として小児科)を患者定点とし,定点数は別表1に掲げる「保健所の人口規模別による患者定点の算出方法」を参考として算定すること。
ウ.対象疾病のうち,(14)から(16)までに掲げる疾病については,眼科の医療機関を患者定点とし,定点数は前記イにより算定された定点数の概ね10%とすること。ただし,当該数が3か所未満の場合であっても3か所を選定すること。
エ.対象疾病のうち,(17)及び(18)の疾病については,対象者がほとんど入院患者であるため病院(主として小児科)を患者定点とし,定点数は,前記イにより算定された定点数の概ね10%とすること。ただし,当該数が3か所未満の場合であっても3か所を選定すること。
(2) 検査定点
病原体の分離等検査結果の情報を収集するため,医療機関を検査定点とし,次の点に留意して選定すること。
ア.原則として,患者定点として選定された医療機関の中から選定すること。
イ.定点数は,選定された患者定点数の概ね30%とすること。
ウ.(1)のエにより選定された病院は(17)及び(18)の疾病についての検査定点とすること。
2.実施方法
(1) 患者定点
ア.患者定点として選定された医療機関は,速やかな情報提供を図る主旨から患者発生件数の把握に際しては,調査単位(日曜日から土曜日までの1週間)の間の診療時における主として臨床的診断の結果をもって行うものであること。
イ.前述1の(1)のイにより選定された小児科,内科の医療機関においては,別紙要様式1により,また,前記1の(1)のウにより選定された眼科の医療機関においては,別紙様式2により調査単位の患者発生件数を疾病別,年齢階級別に調査票に記載すること。また,対象疾病についての特記すべき検査情報及び対象でない疾病についての特記すべき事項等がある場合は,調査票中「その他特記事項」欄に記載すること。
ウ.前記1の(1)のエにより選定された病院においては,別紙様式3により調査単位の患者発生状況及び検査結果を調査票の「新報告例」欄に記載することとし,検査結果が当該調査単位の期間内に判明しない場合又は陰性の場合は「検査結果」欄を空欄とする。その後検査結果が陽性となった時点で「報告済で検査結果判明例」欄に所要事項を記載すること。
エ.調査票は,調査単位の翌週の火曜日までに地方感染症情報センターに到着するよう通報すること。
(2) 検査定点
ア.検査定点として選定された医療機関は,別に定める感染症サーベイランス事業検査指針により細菌学的及びウイルス学的検査のために検体を採取すること。
イ.検査定点で採取された検体は,別紙様式4の検査依頼票を添えて,原則として管轄の保健所を経由して地方衛生研究所等(検査機関)へ搬送すること。
(3) 地方衛生研究所
ア.地方衛生研究所は,前記(2)のイにより搬送された検体を検査し,その結果を保健所を経由して検査定点に通知するとともに,これを検査情報として地方感染症情報センターへ適宜通報すること。
イ.検査のうち,実施不可能なものについては必要に応じ国立予防衛生研究所へ検査依頼すること。
ウ.地方衛生研究所は,前記アの検査情報を月報として翌月の15日までに国立予防衛生研究所へ通報すること。ただし,ウイルス分離結果については,別紙様式5のマークシートによりその都度通報すること。
(4) 国立予防衛生研究所
ア.国立予防衛生研究所は,地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し,その結果を地方衛生研究所へ通知すること。
イ.前記(3)のウにより地方衛生研究所から通報された検査情報を月報として集計し,当月の15日までに中央感染症情報センターへ通報すること。ただし,ウイルス分離検査等で必要なものはその都度連絡すること。
(5) 地方感染症情報センター
ア.地方感染症情報センターは,患者定点から通報された患者発生情報(感染症サーベイランス調査票)を速やかに集計し,地方衛生研究所から適宜通報される検査情報と中央情報センターから送付される全国情報を含めて速やかに週報として,定点医療機関,医師会,保健所,教育委員会,市町村等の関係機関へ還元すること。この場合必要に応じ(月1回以上)解析評価を加えて行うものとすること。
イ.地方感染症情報センターで集計された患者発生情報は,別紙様式6によるOCRカードに疾病別,年齢階級別の患者発生件数等を記載するとともに,対象疾病についての集団発生,地域的流行及び特記すべき検査結果にかかわる情報並びに対象となっていない疾病についての特記すべき情報があれば別紙に記載し,併せて調査単位の翌週の金曜日までに中央感染症情報センターへ到着するよう通報すること。
なお,様式3による調査票のうち,「検査結果」欄に記載のあるものについては,その写を同時に送付すること。
(6) 中央感染症情報センター
ア.中央感染症情報センターは,地方感染症情報センターから通報された全国の患者発生情報を速やかに集計し,当該通報指定日((5)のイ)の翌週の火曜日までに地方感染症情報センターへ還元する。
イ.国立予防衛生研究所から通報された検査情報は患者発生情報とともに,速やかに地方感染症情報センターへ還元する。
ウ.患者発生情報及び検査情報を還元する場合は,必要に応じ(月1回以上)解析評価を加えて行うものとする。
第6.実施期間
この実施要綱は,昭和56年7月1日から施行する。
別表1.保健所の人口規模別による患者定点の算出方法
様式1.感染症サーベイランス調査票(小児内科用)
様式2.感染症サーベイランス調査票(眼科用)
様式3.感染症サーベイランス調査票(病院用)
様式4.感染症サーベイランス事業検査依頼票(案)
様式5.病原微生物検出報告票(書式1)
様式6.感染症サーベイランス調査票
参考資料1.感染症サーベイランス事業フローチャート
参考資料2.1.患者情報の収集・還元方法
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