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Vol.3 (1982/2[024])

<国内情報>
ロタウイルス以外の小型下痢症ウイルス:2音更(Otofuke)因子の南下?


音更因子は北海道内で発生した急性胃腸炎の集団発生から見出された直径約35〜40nmのDNAをもったウイルス粒子である。1),2)

臨床像は嘔吐を主徴としているものの流行の発生時期に特徴はなく,患者の年令も小児から成人に及んでいる。

又,この因子は札幌市内および北海道の小児間で発生した胃腸炎から分離された所謂,札幌因子,SRVと共通抗原のある事が確認されている。2)しかし,これらの因子は青森県以南での分離報告例が無い。

我々は1981年12月仙台市内で嘔吐症を発症した患者から音更因子様ウイルスを分離したので1981年10月から1981年12月にかけて宮城県に於ける流行性嘔吐症の概況と合せて報告する。

1.小型球型ウイルス

1981年12月,仙台赤十字病院に来院した嘔吐下痢症の患者2名のうち1名の糞便材料から,形態学的に音更因子と思われる粒子を検出し,免疫電顕法で患児がこの因子にり患したことを確認した(表)。この因子の血清学的同定は現在実施中であるが,粒子の大きさ(35〜40nm)およびVirion周辺部のスパイク構造などは,浦沢ら1)の「音更'78」と酷似している。血清学的に音更因子と同定されれば,北海道以南では最初の確認例であり,本州における流行の兆しとも考えられる。

2.宮城県における流行性嘔吐下痢症

1981年10月頃から宮城県内で,いわゆる流行性嘔吐下痢症の散発的流行が報告されていたが,5)この時期に我々が知っただけでも6つの施設(小学校及び幼稚園)で,同様な疾病の集団発生があった。中でも11月16日と17日に集中して患者の発生した県北のKs小学校の場合は,在籍児童数1074名中り患児童699名という大規模なものであった。Ks小学校における集団発生の原因については,細菌の関与はほぼ完全に否定され,現在ウイルス学的調査を実施中である。

3.今回検出された因子とKs小学校の集団発生との関連についても,現在調査中である。



文献

1) 浦沢正三他,臨床とウイルス 8.71〜75.1980

2) 石田名香雄他,ウイルス 31.167〜170.1981

3) 佐藤恭彦他,臨床小児医学 27.195〜201.1979

4) Kogasaka. R., et al., J. Med. Virol. 5.151〜160.1980

5) 東北六県防疫月報 第57号,第58号



宮城県衛生研究所 梅津幸司,白地良一,山本 仁
仙台赤十字病院・小児科 千葉 良
東北大・医・小児科 鈴木 宏








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