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本症の集団発生は1981年11月12日から翌年1月22日現在まで,中学校1,小学校14,幼稚園2,保育園1の各施設より届出がなされ,県南地域に多発し,少数は他地域にも認められた。なお,散発例については実態が明らかでないが,かなりの数にのぼっているようである。今回の集発例は小学校とくに低学年に多発する傾向であった(表)。
患者は突発的に発生し,嘔吐(60〜90%),腹痛(60〜70%),下痢(30〜50%),発熱(40〜60%)を主徴とした。患者の症状は数日で消退,回復する短急な経過を示し,重症患者は認められなかった。罹患児より大人への家族内感染例も認められているが,症状は軽微なようであった。
今回流行した疾患は嘔吐を主徴としている点で昭和51年4月,県下で集団発生したRota virusによる流行性嘔吐下痢症(患者数335名,主要症状は腹痛65%,下痢60%,嘔吐25%,発熱16%)とは異なっていた。今回の例ではウイルス学的,血清学的にRota virusが否定され,小球形ウイルスによる感染症の可能性が強い。すなわち,患者糞便から電顕的観察により,形態学的に異なる3種類の小球形ウイルス様粒子が検出された。
@直径20〜30nm,辺縁は比較的滑らかで,表面に多数のカプソメア様構造が認められた。内部が濃染した中空の不完全粒子も多数存在した。6小学校のうち3校から検出され,今流行の主要な起因ウイルスと考えられる。A上述の粒子の認められた検体の1つから,それよりやや大きく,中心のhollowが6コのhollowで囲まれたかなり明瞭な表面構造をもつカリシウイルス様粒子が認められた。B1小学校において,直径30〜40nmで,辺縁および表面が粗な小球形の粒子が認められた。これらの粒子の性状および本症との関連については,現在検討中であり,国立予防衛生研究所にも検査を依頼している。また,採取した多数の患者便の検査が残されており,これらの検索終了後,その詳細を報告したい。
追記:@のウイルスについてdensityを測定した結果,1.36g/mlであった。(予研・松野)
岡山県環境保健センター 上羽 修
表1.流行性嘔吐下痢症の集団発生状況
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