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Vol.3 (1982/8[030])

<外国情報>
ヒトのレプトスピラ症(英国)


 7名の死者を含む計72名のレプトスピラ症の発生が,1981年度にレファレンスラボラトリーによって確認された。1979年の55例,1980年の48例を大きく上まわった。しかもスコットランドに関しては,1979〜1980年の17例(うち11例はHebdomadis感染)に対して1981年は1例にすぎず,対照的に,イングランドとウエールズでは17例,北アイルランドでは11例,エールでは11例も1980年度を上まわった。報告努力のよさのためであろう。イスラエルとBelizeでの外国感染例がそれぞれ1例ずつあった。

 病気の発生は季節と関係があり,9月が最多発生月であった。汚染水に入って発生した9例中の6例は,レクリエイションの水遊びの盛んな晩夏そして初秋におこっている。ウシとの接触のはっきりしている感染例の半分は,7月と8月に発生しているが,一方,農業従事者である他の大部分はもっと年の後期に発症している。

 病気の重症度は感染原因であるレプトスピラの血清群と関係がある。L. icterohaemorrhagiaeによる感染は一般にもっとも重症であり,39例中17例は黄疸と腎不全を伴っており,うち2例が死亡し,黄疸のみは11例,腎不全のみは2例,脳脊髄膜炎症状のみは2例,そして3例はインフルエンザ様であった。

 一方,L. hebdomadisによる18の感染例に関しては,4例が黄疸を示し,1例のみが腎不全を伴った。また,8例は脳脊髄膜炎を示し,6例はインフルエンザ様であった。L. canicolaによる感染例4例のうち3例は黄疸をもち,1例のみがこの感染に特徴的な発熱に伴う頭痛を示した。5例の死亡例を含む7例は,死亡までの病日が短くて抗体価があがらず,または血清採取が不可能で血清群が同定できなかった。

 患者の大部分(89%)は労働年令であり,2例のみが14才の子供で,汚染水に落ちたことがわかっている。30例の患者の職業は農耕,あるいは農耕用の動物との関係が認められている。牛と接触のあきらかな8例のうち7例の患者は,Hebdomadis型感染であり,残りのうち11例はIcterohaemorrhagiae型感染で,6例はHebdomadis型であった。全例のうち12例はネズミとの接触があり,他の10例は汚染河川水にひたって,間接的にネズミや他の宿主に接したものと思われる。これら22例のうち17例はIcterohaemorrhagiae型感染であった。Canicola感染4例のうち1例は犬との接触があり,他の1例は発症前に河川の清掃を行ったという。2例のAutumnalis型感染はアイルランドで発症したもので,うち1人は庭師であった。この種の株は英国では主にwater volesや豚から分離され,ヒトの感染は稀である。2例のGrippotyphosa型感染は外国で感染したもので,一人はイスラエルで働いており,他はBelizeに駐屯している兵士である。発熱と肝機能不全があるが,黄疸はなく,症状は一般に軽い。この型は英国本土諸島にはないが,他のヨーロッパ地区や中東ではありふれたもので,野ネズミ由来でmouse fever,field fever,mud feverなどと呼ばれている。

(WHO,WER,57,24,184,1982)






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