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米国CDCの報告によると,1981年〜1982年冬期におけるインフルエンザウイルスの分離状況は,分離株数625のうちB型が74%,AH1N1型が24%であり,流行の主流はB型としている。AH3N2型は,散発例からわずか1%検出されたにすぎない。1)
我が国においても同様に,B型が流行の主流であった。AH1N1型ウイルスは,1981年11月に福岡県で2株,その後三重県で1株分離された。また,AH3N2型ウイルスは,1981年12月に札幌市内小学校の集団発生で3株分離されて以来,北海道,仙台市,三重県および静岡県で検出された。AH1N1型及びAH3N2型いずれの場合も,局地的流行あるいは散発例で,その拡大は認められていない。2)
山形県においては,1982年1月〜3月のインフルエンザ流行中,73名の患者のうち26名からB型ウイルスが分離された。A型ウイルスは検出されなかった。
このB型の流行が終息した後,インフルエンザ様疾患の集団発生は見られなかった。しかし,同年6月中旬,山形市内の某事業所(職員数27名)において,発熱(38.0〜39.0℃),頭痛,腰痛,および鼻汁分泌を訴える患者がほとんど同時期に10名発生した。そして,そのうち3名について検査し,2名の咽頭拭い液よりふ化鶏卵接種法によりAH3N2型ウイルスが分離された。これら2株のウイルスは,ニワトリ免疫血清を用いた抗原解析の結果(表1),現ワクチン株であるA/Bangkok/1/79の抗原性と差異が認められた。患者ペア血清のHI抗体価の変動では,ワクチン株,分離株共に4倍以上の抗体上昇が認められた(表2)。
今回,局地的ではあったが,成人の間に罹患者の拡大が認められたインフルエンザの小流行から,抗原性にズレのみられるウイルスが分離された。今後このウイルスの浸淫状況を調べる予定である。
文 献
1)MMWR:31(27),375〜379,1982
2)武内 安恵,公衆衛生情報:12(2),4〜10,1982
山形県衛生研究所 大泉 昭子,大山 忍
表1.分離ウイルスの抗原性
表2.患者ペア血清のHI抗体価
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