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Vol.4 (1983/4[038])

<特集>
アデノウイルスと角結膜炎および咽頭結膜熱


 感染症サーベイランス情報の流行性角結膜炎ならびに咽頭結膜熱の患者発生数は,ともに1981年には8月をピークとして多数報告された。これにくらべ,1982年の夏には大きなピークにはならず,とくに咽頭結膜熱の減少がめだっている(図1)。この図では便宜上1眼科定点あたりの報告数をプロットしてあるが,咽頭結膜熱については大部分が一般定点から報告されているとみられる。

 この流行パターンはアデノウイルスの分離状況とよく一致する。角・結膜炎症状をともなった者からの月別アデノウイルス分離数を図2に示した。1981年夏には患者のピークに一致して,アデノ3型が多数分離され,さらにアデノ4型の分離数の増加が重なって,アデノウイルスが大流行したことを示している。1982年には前年にくらべ3型,4型が減少したのに対し,8型が増加しているのが注目される。

 1981〜82年に角・結膜炎の症状のあったものより分離されたウイルス(表1)はアデノウイルスが圧倒的に多く,型別では3型が183,ついで4型が74であった。また,各ウイルスについて角・結膜炎症状を伴ったものからの検出数が総検出数に占める割合をみると,アデノ3型31.0%,4型46.3%,8型94.7%,11型35.0%,19型91.7%で,眼疾患がこれらアデノウイルス感染の主要症状であることを示している。アデノウイルス以外で角・結膜炎が報告されたウイルス分離例は,エンテロ70型,インフルエンザ,コクサッキーB,その他であるが,エンテロ70型以外は分離総数に対する割合は少なく,また,眼ぬぐい液からの分離はまれで,大部分は鼻咽喉ぬぐい液からの分離報告である(表2)。

 アデノウイルスが分離された検体は角・結膜炎の症状のあった426例のうち272例(63.8%)が眼ぬぐい液より,173例(40.6%)が鼻咽喉より分離された(表2)。年令は8才以下が約半数を占めるが,総検出数に対する角・結膜炎の割合は加令とともに増加し,15才以上では大部分が角・結膜炎症状を示した者からの分離報告である(表3)。



図1.流行性角結膜炎と咽頭結膜熱の患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.角膜炎・結膜炎の症状のあったものよりのアデノウイルス検出状況
表1.角膜炎・結膜炎の症状のあったものよりの月別ウイルス分離数
表2.角膜炎・結膜炎の症状のあったものよりの検体の種類別ウイルス分離数
表3.アデノウイルスの分離された角膜炎・結膜炎の症状のあったものの年齢分布





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