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Vol.4 (1983/4[038])

<外国情報>
米国における川崎病


 1982年10月以来,主として就学前の小児を冒す稀有な疾病である川崎病について,4つの集団発生がCDCに報告されている。それらの集発は4つの州に3ヶ月にわたって43の症例を惹起した。死亡例はない。

 イリノイ州:Cook,Will,DuPageそしてMc-Henryの4つの隣接郡において11症例が発生した。12月から1月にかけてである。平均年令は4.3才で,うち4名が女児であった。1名が黒人で10名が白人。8名が入院し,報告によれば2名に冠動脈瘤が認められた。

 ミシガン州:Kent郡において11月3日から12月31日の間に9症例が発生した。平均年令は3.1才,7名が女児,6名が白人,3名が黒人,うち8名が入院した。1名が心症状を示し,心臓炎,心嚢滲出液,軽いSTセグメントの上昇をみた。州の他地区にも散発例がみられている。

 ニューヨーク州:10月15日から1月20日の間,2つの隣接する郡から7症例が報告された(Oneida郡,Herkimer郡)。平均年令2.6才,うち4名が女児。すべて白人,6名が入院し,冠動脈瘤が1名にみられている。

 ウィスコンシン州:11月28日から2月3日の間に,16症例がミルウォーキーとその隣接4郡から報告された。平均年令2.3才,8名が女児,12名が白人,2名が黒人,2名がアジア系であった。全例入院した。左右の冠動脈の拡大をみたのが1症例,また5症例に左心部の拡大をみた。2症例にごく軽い心嚢滲出液を発見した。

 編集部註:川崎病は1967年に日本の小児科医によって初めて記載された。原因は不明である。したがって臨床診断によるが,CDCによる定義として,まず,他にしかるべき理由のない熱が5日,あるいはそれ以上続くことに加え,1)両側の眼結膜の充血,2)次の粘膜変化の少なくともひとつをもつこと(口唇の充血あるいは亀裂,咽頭の充血,いちご状の舌),3)次の四肢末端の変化のひとつをもつこと(手掌または足裏の発赤,手足の浮腫,末梢一帯あるいはつめのまわりの表皮脱落),4)発疹,5)頸部のリンパ腺腫(すくなくともひとつのリンパ結節の大きさが径1.5cmをこえるもの)があげられている。冠動脈瘤は症例の17〜31%の率でみられる。死亡率は約1%。

 川崎病の集団発生はこれまでもニューヨーク市,ニューヨーク州モンロー郡,ロサンゼルス,東マサチューセッツ,ハワイ,デンバーから報告されている。これらの報告ならびに全国的サーベイランスによってCDCに報告された症例をみると,冬から春にかけて発生が多い傾向にある。

 モンロー郡と東マサチューセッツでの調査によると,発症前30日以内に前駆症ともいうべきものが(特に呼吸系),対照群よりも高率に存在するという。しかし,血清学的そして病原体分離検査のいずれもが,この前駆症を単一原因に帰することができなかった。また,社会経済的に中以上の家庭により頻度の高い傾向がある。

 デンバーでの集発に際して実施された最近の対照調査によると,病気の発生前30日以内にじゅうたんの洗濯をしたことのある家庭が23例中11例(48%)あり,対照家庭では86中9例(10%)であった。これらの10患者の家庭においては,洗濯されてきた2時間以内にそのじゅうたんの上に子供を放置しているが,対照家庭においては4時間の間は子供を遠ざけていた。じゅうたん洗濯と発病との間隔は9患者の家庭において16〜25日であった。

 日本の研究者達は家のほこりのダニ(Dermotophagoides)と川崎病との関係を提唱しているが,ある研究者によると,ダニに対するIgG抗体レベルが15〜20名の川崎病患者において対照群の2倍以上(血清稀釈度)であった。その他IgEについても同様な報告があり,免疫複合体の関与も報告されているが,いまだ他の研究者による追認がなく,今後に問題が残されている。

(CDC,MMWR,32,No.7,98,1983)






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