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Vol.4 (1983/4[038])

<外国情報>
亜急性硬化性全脳炎(SSPE):米国


 SSPEは麻疹感染後におこる中枢神経系の遅発性ウイルス感染症で,ふつう少年期または青年期に発症する。米国におけるSSPEの全国的データ収集は1969年より開始された。集められる症例は特徴的臨床症状に加えて,下記の検査のいずれかで確認されたものである。すなわち,1)CSF中の麻疹抗体証明,2)特徴的脳波形,3)脳生検または剖検において特異的組織学的所見。

 1982年7月までの報告で,368例が上記規定に合致するUS市民患者(1969〜1981年発症)で,このうち55%は麻疹罹患者,14%はワクチン接種者,17%が両方の感染歴があり(大部分は自然感染が先),14%は既往歴がなかった。SSPE発症の20才以下に対する発生率は1970年は0.61/百万であるが,1975年には0.35,1980年には0.06に減少した。

 註:SSPE報告数は1973年以降減少した。図1にみられる麻疹患者の減少とSSPE患者減少のパターン間のずれは,自然感染症のSSPE発症までのずれ(平均7〜10年)とよく一致する。しかし,SSPEの診断には時間を要するため,発症と届出間に数年(平均3年)を要するから,現在の麻疹撲滅運動がSSPE発症に及ぼす効果を知るにはまだ10年を要するとみるべきである。

 ワクチン接種後のSSPE発症のリスクは自然感染後のそれの1/12以下である。この場合でも無自覚な自然感染をうけている可能性がある。ある調査では既往歴のない者の15〜30%が麻疹抗体をもっていた。この国で麻疹がなくなって数年のちに初めて生麻疹ワクチンのSSPEにおける役割が明確にされよう。

(WHO,WER,No.11,80,1983)



図1.





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