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Vol.4 (1983/5[039])

<特集>
細菌性下痢症


 図1に下痢症に関連する病原菌について,1982年中に全国地方衛生研究所・保健所(図左)および各県の参加医療機関(図右)から報告された月別検出数を示した。実数は表1および表2に集計してある。地方衛生研究所(地研)・保健所報告は主に集団発生および行政的検査を含むのに対し,医療機関報告は一般患者に関する検査情報である。

 下痢症に関係する病原菌のうち,病原大腸菌の検出には季節変動がみられない。これに対し,腸炎ビブリオは8,9月にピークを示し,またサルモネラの検出数は7,8,9月を中心に幅広い山を示した。これら3種の病原菌検出の季節的傾向は左右の図でよく一致している。厚生省食中毒統計における食中毒発生件数の山も図1とよく一致し,さらにこれ以外にブドウ球菌による食中毒が8月を中心として高頻度に報告された(資料掲載せず)。

 カンピロバクターに関しては,地研・保健所報告と医療機関報告の間で,検出のパターンに差が認められ,また他の病原菌と異なって医療機関における検出数が地研・保健所報告数を上まわっている。この成績からみると,カンピロバクター感染は年間を通じ相当に多く,散発例は常在しているが,集団発生が夏季に集中するために地研・保健所集計において6月を中心にめだったピークを示すようになると解釈される。図1に示した集計では感染年令について収集されていないので,これに関する情報として,都市立伝染病院における急性腸炎入院患者の年令分布を表3に示した。カンピロバクター感染は小児だけでなく成人にも広くみられ,伝染病院の入院患者ではサルモネラ感染を上まわっている。

 下痢症の主な病因としてロタウイルスがあるが,図1にみるようにロタウイルスは冬期に限定して流行し,細菌性下痢症の流行とは季節的に区別される。



図1.月別病原菌分離状況
表1.下痢症病原菌月別分離数 1982年(地研・保健所)
表2.下痢症病原菌月別分離数 1982年(医療機関)
表3.11都市立伝染病院における急性腸炎入院患者からの分離症例数 1982年





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