|
1)流行状況:1982年11月下旬から12月上旬にかけて仙台市,横浜市,静岡県の散発流行からA香港型H3N2株が分離された。鹿児島県では12月に中学の集団発生からAソ連型H1N1株が分離された。1983年の1月になりA香港型株の流行が全国的に拡大した。Aソ連型株はその後1月に熊本県,長崎県でも分離され,さらに静岡県と滋賀県でも小数例分離された。流行の規模は昨年のB型流行に比較し,小,中学生等の風邪様患者の報告数でみると約1/3弱の流行である。流行から分離されたA香港型株は約1500株,Aソ連型株は約20株であった。
2)分離株の抗原分析:フェレット感染血清による抗原分析の結果(表1,表2)では検査した132株中A/東京/1/77株とA/バンコク/1/79株が9株(7.0%),A/京都/C−1/81株より稍差異のみられる株が53%,さらに大きな差異のみられるA/大分/3/83株が約40%分離されている。A大分/3/83株の鶏免疫血清をA/新潟/102/81株とA/京都/C−1/81株でそれぞれ吸収した抗血清の抗原分析でも表3のごとく差異がみられる。A/大分/3/83株はA/フィリピン/2/82株と同型である。
3)ワクチン接種前後のHI抗体価の変動:昨年度のA/新潟/102/81型ワクチンを接種した中学生の抗体価を比較すると,図1のごとくA/新潟/102/81株とA/京都/C−1/81株は同じ程度に上昇がみられるが,A/大分/3/83株は約1/4位の低い抗体価を示し,差異がみられる株である。
4)ワクチン接種前後のNI抗体価:ノイラミニデース抗体(NI)価が比較的高い人がインフルエンザに罹患するとウイルスの排泄期間が短縮され,臨床症状も軽減するといわれている。市販ワクチンと高力価ワクチンを接種し,接種前と接種1ヶ月後の血清のNI価を測定した。市販ワクチンでは接種前の平均NI価3.1が4.79に上昇し,上昇率は1.54倍。高力価ワクチンでは2.32が4.59に上昇し,1.98倍の上昇率を示したが,両ワクチンの比較では差異は認められなかった。
予研 武内 安恵
表1.Hemagglutination inhibition reactions of influenza A(H3N2) viruses
表2.Hemagglutination inhibition reactions of influenza A(H3N2) viruses
表3.Hemagglutination inhibition reactions of influenza A(H3N2) viruses
図1.Comparison between V antibody titer before inoculation with commercial vaccine and that 1 month after inoculation.
|