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Vol.4 (1983/7[041])

<外国情報>
西ドイツのジフテリア


 ドイツにおいてジフテリアは1940年代に大流行した(致死率5〜6%)が,予防接種によって1948年以降劇的に減少し,過去200年間およそ30年間隔で周期的に流行したジフテリアはすでに制圧されたと考えられていた。

 状況が突然かわったのは1975年から始まった高致死率の強毒性ジフテリアの発生によっている。例外なく大量に毒素を産生するCorynebacterium diphtheriae var mitisによるもので,ほとんどが学校か幼稚園で流行し,子供だけでなく成人が発症している(例えばDusseldorfの流行では9例中7例は14〜51才で3名が死亡)。感染の成人への移行は2〜14才群は予防接種を受けているのに対し,15〜34才の年令では抗毒素免疫が極めて低いことから説明される(0.1iu/ml以上の抗毒素保有率は21%)。1982年Dortmundの流行では致死率は1/3に達し,1株を除いてすべてファージ型17"ad2"で同一の溶原性型lg/1030であった。表にみるように1975年から1983年までの103例中致死率は22.3%である。これは1875〜1890年の流行と同率であり,また,1940年代より4倍高い。

 高致死率の原因として次が考えられる。

 (1)流行株が強毒素性である。この株は多分,ジフテリアがエンデミックに存在する中近東から輸入されたとみられる。(2)抗毒素免疫が極めて低く,3500人の調査で2〜14才の49%およびこれ以上の年令の78%が感受性(<0.1 iu/ml)である。(3)若い医師はジフテリア感染に未経験なので,診断と抗毒素処置がおくれることがある。

 1975年以降のこのジフテリアの再発生が新しい大流行の初めを意味するかどうかはまだわからない。今のところは局地的なボヤのようである。医師および衛生当局は,ジフテリアが新たに疫病になるのを阻止すべく,強力かつ綿密な予防接種計画を推進すべきである。

(CDR 83/18,3)



西ドイツのジフテリア1975〜1983





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