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近年マイコプラズマ培養用の馬血清(HS)の品質の良いものが入手しにくくなったとの声を聞くようになった。種々の文献にみるとおり,HSを20%も添加すると生育阻害の現象のみられることが多い。そこで私達はHSの代用品としてEYの実用化を研究している。新鮮な卵黄をPBS(−)に20W/V%になるように分散,よく撹拌後,15000gで40分間遠心分離した上清をとり,ペニシリンを500u/mlになるように加え,4℃で保存した。実験用培地としてDifco PPLO BrothにEYを10W/V%加えた培地(EY培地),および常用されるChanock培地を用いた。
これらの培地の性能の比較を,肺炎患者から分離同定されたM.pneumoniaeの35株を用いて行った。Chanock培地の馬血清は性能の不良な品と良好な品との2種類を用いた。表1に示すごとく,菌の早期検出能力においても,少数菌の検出能力においても,EY培地の方がすぐれていた。
マイコプラズマの生育に必要ないくつかの成分について,EYおよびHS中の含有量の比較を行うと表2のごとくになった。EY中の蛋白質含量はHS中の1/4なのに対し,マイコプラズマの膜合成に重要な役割を果たすphospholipidおよびM.peumoniaeの増殖初期段階に重要な役割を果たすといわれるfree cholestrolはいずれもHS中の8倍以上も含まれていて,栄養面でもすぐれていることが認められた。なお,EY液体培地は透明度は若干劣っていたが,何回試作してもロット間に性能の差が認められないこと,4℃に2年間保存しても性能は低下しないこと,代謝阻止試験の結果が早く明瞭に出ること等々の特長がある。
詳細は第8回および第9回の日本マイコプラズマ学会記録(佐々木次雄ほか)を参照にせられたい。
予研一般検定部 木原 光城
表1.EY培地およびChanock培地の新分離株35株に対する生育支持能の比較
表2.HSおよびEY中の蛋白質,リピド,コレステロールの濃度の比
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