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1982年,Maryland州の保健・精神衛生局に報告された百日咳の報告数は79で過去10年の平均数を大きく上まわった。うち60(76%)は1才以下であり,46(58%)は6ヶ月未満児であった。患者のうち57%は入院し,とくに1才未満については68%が入院した。12名が肺炎を併発し,1名が脳症に発展したが,死亡例は皆無であった。患者発生は3月にはじまり,7月をピークとした。
44例(56%)が検査室所見で確認されており,うち29(37%)は直接蛍光抗体法により,4(5%)が培養により,そして11(14%)がそれら両方により確認されたものである。のこり35(44%)は臨床診断のみによった。検査室所見による確認の成功率は,検査材料の採取以前に抗生物質が投与されていたか否かに左右され,その以前では73%,以後においては30%である。
生後6ヶ月以上の患者33名のうち,22名(61%)は百日咳ワクチンの3回接種を完了しておらず,また,26(33%)は三混ワクチンの接種対象であるにもかかわらず,接種当日に病気であったとか,発育不全,あるいは宗教上の理由,さらには副作用に対する危惧感から接種を受けなかった。
各患者の家族状況を調べてみると,72の家庭で236の家族メンバーがつかめたが,うち74(31%)が10才以下であった。それらの子供の64(86%)の予防接種記録がはっきりしているが,3回あるいはそれ以上三混ワクチンを受けたものは54(84%)で,家族内接種者のうち4例の二次感染がみつかった。その1例は4才児で接種歴をもたず,2才半と3才の2例は3回接種以上を完了しており,のこり1例の大人は接種証明書をもたないが,3回接種を完了したという。こうした数は少ないのであるが,Maryland州における0〜9才児の家族内接種者でのワクチン有効率を計算してみると89%となる。
1980年と1981年,Maryland州においては,入学時におけるDTPの接種完了率は96%と高いが,入学前の児童については低く,ある調査によると69%である。百日咳ワクチンの副反応についてテレビによる紹介があったため,DTPの売り上げ高は1982年4月には45%に落ちたが,その2ヶ月後にはもとに戻った。一方,DT/Td*の売りあげ高は,この時160%も上昇し,その後も100%増を維持している。百日咳の発生増加が伝えられると,州衛生当局に百日咳単味ワクチン供給の要請がはじまった。(Td*=成人用トキソイド)
編集部註:以上のことから,百日咳はワクチンによって防御される病気であり,しかも生後できるだけ早い時期に正規の接種を完了することが有効であることを強調している。
(CDC,MMWR,32,No.23,297,1983)
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