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広島市では,本年6月上旬から8月末まで400名をこえる規模の無菌性髄膜炎の流行がみられている。
1.患者発生状況
広島市感染症サーベイランスによる患者発生状況を図1に示した。1月から5月までは10〜20名程度であったが,6月から患者数の増加がみられ,7月には195名が報告された。8月に入ってやや減少傾向は認められるものの依然多発し,6月から8月31日現在までののべ患者数は430名あまりに及んでいる。
患者の年齢分布は,5〜9歳が48.2%で最も多く,ついで1〜4歳(25.2%),10〜14歳(20.2%),15歳以上(4.6%),1歳以下(1.8%)の順となっている。
2.ウイルス分離
これまでに実施したウイルス分離成績を表1に示した。2月にコクサッキーA9型が1症例2検体(咽頭ぬぐい液1検体,髄液1検体)より分離されているが,4月以降はすべてエコー30型で,23症例26検体(髄液21検体,糞便3検体,咽頭ぬぐい液2検体)から分離された。特に患者が激増した6月では,25症例29検体中,15症例15検体から分離され,高い分離率を示した。
分離にはAGMK,HE,HEp2細胞を用いた。HEp2で26件,HEで5件分離された。AGMKでは全く分離されなかった。今回の無菌性髄膜炎は髄液からよく分離された。
3.血清診断
6月上旬から7月中旬にかけて罹患した45名のペア血清について,分離ウイルスに対する中和抗体価を測定したところ,29名に4倍以上の有意上昇が認められた。
以上の結果から,今回の流行はエコー30型によるものと判明した。
なお,4月および5月の散発患者からエコー30型が分離されていることから,4月頃より本ウイルスの浸淫が始まったものと考えられる。今後,血清疫学的な面からも検討を試みてみたい。
広島市衛生研究所 松石 武昭,池田 義文,瀬尾 和範,野田 衛,荻野 武雄
図1.月別無菌性髄膜炎発生状況
表1.無菌性髄膜炎のウイルス分離成績
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