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1978年11月から開始された横浜市でのかぜを主な対象疾病としたウイルス調査は,現在までに5年が経過し,今年9月末までの集計で3481検体から1463株のウイルスが分離された。この調査は5開業医院が定点となり,毎週このうち2または3定点において患者から咽頭ぬぐい液が採取され,当日中に主な分離検査が実施される方式となっている。分離には全例についてMDCK,HEp2,Vero-trypsin系が用いられ,夏期には哺乳マウスも加えられている。これらの検査により分離されるウイルスは多岐にわたり,アデノ8種221株,コクサッキーではA群9種207株,B群5種56株,エコー5種39株などウイルスの種類は40に及んでいる。
調査の性格上,インフルエンザ,パラインフルエンザ,RSウイルスはやはり多く,676株で分離株中の46.2%を占めている。これらのウイルスの月別検出数(表1)は,それぞれのウイルスの季節的特長を再確認するものであり,ここでは流行閑期における検出例について考えてみたい。パラインフルエンザ3型は12月に1株,RSウイルスは8月に2株見出されているが,これらのウイルスは年々着々と流行しているウイルスであり,流行の谷間でも時には検出されうるものと考えることができる。また,インフルエンザAH3型は9月,B型では10月に分離例があるが,これらはいずれも前後の冬期には流行が確認されている。1983年9月にAH1型が検出された。横浜市では,1981年春以降はAH1型は検出されておらず,国内でも九州地方以外には滋賀,静岡両県に見出されたにすぎない。こうした状況を考えると,このAH1型は国内での伝播に加えて,国外から移入された者から拡まったということも考慮する余地があり,違った観点から検討する必要がでてくる。これはとくに変異株出現時には重要な意味をもってくるし,また,インフルエンザに限らず,他の多くのウイルスについてもいえることである。これらの際には,とくに検査研究機関の密接な連携が必要とされるであろう。
横浜市衛生研究所 遠藤 貞郎,小島 基義,野村 泰弘,母里 啓子
表1.主な呼吸器ウイルス検出数(1978.11〜1983.9)
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