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当市では,総合病院の小児科6ヶ所,眼科医院1ヶ所を定点としてウイルス分離をおこなっている。小児科では主として「かぜ」症状を示す患者を対象に,眼科においては流行性角結膜炎,咽頭結膜熱およびAHCの3疾病に重点をおき,検体を採取している。検体の種類は,小児科では咽頭ぬぐい液が多く,眼科では今のところすべて眼ぬぐい液である。
アデノウイルスは年,型により多少の変動があるものの,全体としてみれば常時分離されている。名古屋市における過去1年(1982年10月〜1983年10月)の月別検出状況を表1に示す。
2型は,1981年冬以降3型にかわって主流を占めるようになっている。1981年夏まで長期間常在性を示していた3型は,1982年1月の検出以来分離が無かったが,今年6月から再び現れるようになった。1型,5型および6型は,散発的な分離が続いている。8型は,眼科定点において散発的だったが,今年4月と5月に多数分離され,このウイルスによる限られた地域での流行性角結膜炎の流行があったことが推測される。19型は,やはり眼科定点において昨年8月から分離が続いていたが,今年4月からは出ていない。
これらのアデノウイルスの検出状況に関連し,次のような点に注目している。
・1981年夏以前,長期にわたり多数分離され続けていた3型が,約1年半のブランクの後,再び検出されるようになったが,今後どのような経過をたどるかということ。
・3型のブランクの間,多数を占めていた2型の検出状況はこのまま続くのかどうかということ。
・3型が分離された患者の症状には,7月以後では7割以上に結膜炎が報告されており,当市における今夏の咽頭結膜熱の多発と関連していると思われること。
・少数ながら,髄膜炎症状を持つ患者からアデノウイルスが分離されていること。
・表1には現われていない4型は,1978年12月に初めて検出して以来,1981年9月までしばしば分離されていたが,その後1例も出ていないこと。
以上のような状況は,全国情報とどのように関連しているのか,比較検討を続けていく必要があると思う。
名古屋市衛生研究所 太箸 全孝
表1.アデノウイルス月別検出状況(83年11月現在)
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