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最近のEchovirus type 11 (Echo 11)の全国的流行は1971年およびその10年後の1981年に記録されている。いずれの流行においても,患者の大部分は0〜5歳の乳幼児で占められ,上気道炎,髄膜炎および胃腸炎の臨床症状を示した。予後は良好と報告されている。
過去2年間の全国におけるEcho 11の分離状況をみると1981年には愛知,愛媛,神奈川,島根,京都および石川でほぼ同時期(6〜8月頃)に,計218株ものウイルスが分離されたが,翌年(1982年)は散発的になり,計35株のウイルスが分離されたにとどまった。その後の分離報告はない。
このような時に,1983年7月下旬から8月上旬にかけて,山形市内の某産婦人科医院で出生,保育中の新生児17名中5名(7月29日1名,7月30日1名,8月3日1名および8月6日2名)および母親1名(8月3日発症,8月6日に発症した新生児の母親)が相次いで発症した。臨床症状は発熱が唯一の症状で,頭痛,嘔吐,ケルニッヒ症候および頸部硬直などは認められなかった。新生児の患者5名中3名は山形県立中央病院に入院,加療を受け,約2週後には,全例が後遺症もなく,退院した。入院期間中に実施した髄液所見およびウイルス学的検査の成績を表1に示す。症例1および2の髄液所見は,いずれも無菌性髄膜炎の所見を示した。
次にウイルス学的検査の概要をのべる。各患児の咽頭ぬぐい液および糞便をAGMK,HeLaおよびHELの3種の細胞に接種し,症例1の糞便からHeLa細胞でのみウイルスが分離された。分離ウイルスは,予研から分与されたエンテロウイルス型別免疫血清(Schmidt pool血清)の20単位を用いた中和試験では同定できず,愛知衛研より分与された1971年福岡分離株に対する抗血清(20単位)でEcho 11と同定された。また,患者ペア血清中の分離株に対する中和抗体価(tube法)は,全例において有意に上昇した。
現在,山形市住民の抗体保有状況および分離ウイルスの抗原性について調査を進めている。
山形県衛生研究所 大山 忍 大泉 昭子
表1.入院患児3例の検査結果
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