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Vol.5 (1984/1[047])

<外国情報>
レジオネラ症サーベイランス(英国)


イングランドとウェールズにおけるレジオネラ症サーベイランス計画の枠内で,1979〜1982年の間,588例が同定された。多くの場合は単独散発例であったが,2例以上の連鎖例が32あり,うち24がホテルでの発生,7例が院内感染,のこり1例が建設現場での例であった。とくに4症例以上が連鎖した9つの例は,発生時期がひとつの施設で密接しており,多くの場合ホテルでおこっている。しかもこれらのうち2つの発生以外はすべて外国(ヨ−ロッパ内)の旅行者用リゾートにおけるものである。また,588例のうち45%にあたる265例が英国の内外における旅行と関係している。ただ,それらの外国の国名はこの調査によっては正確に確認できていない。また,発生季節にはあきらかな特徴があり,晩夏から秋に集中しており,人から人への感染の可能性は認められないが,環境要因の関与はしばしば示唆される。

 この調査における診断基準は,原因菌の分離同定,蛍光抗体法による抗体価の4倍以上の上昇,あるいは正常の場合には無菌である場所からの標本において,直接免疫蛍光染色法による菌の検出によっている。また,回復期の抗体価が,卵黄嚢抗原に対して128倍以上を示すときは,臨床経過と照合してレジオネラ症とみなした。症例を担当した医師や細菌検査技師に対しては,感染症サーベイランスセンター(CDSC)から質問表を送付し,回答を集めて分析し,必要に応じて連鎖感染の調査を実施した。次に集発例を例示する。すべてLegionella pneumophila血清型1によるものである。

 例1:ある会社の従業員58名が英国中部にゴルフツアーにでかけ,うち4名が肺炎を発し,その3名がレジオネラ症と診断された。これら4名は同一ホテルに宿泊しており,一方,他の場所に滞在した26名からは発病者はなかった。ゴルフコースには出なかったが,そのあと同一ホテルに滞在したことのある一人の婦人がやはり1週後にレジオネラ症となっている。ホテルの温冷水供給システムからL. pneumophila血清型1が分離された。このホテルには空調の設備はなく,周辺にも冷却水塔は見当たらない。対策として,供給水の遊離残余塩素濃度を持続的に1〜2ppmとしたが,その時点では温水の方の塩素濃度をそのレベルにすることはできなかった。一年後には温水加熱器の温度を60℃あるいはそれ以上とし,蛇口において55〜60℃になるようにした。ただし,この処置は3ベッドルームでは実施できなかった。ところがその翌年,この部屋のひとつに滞在した中年の男性がレジオネラ症にかかった。そこであらたに塩素消毒設備を設置して,塩素濃度を温水中でも1ppmとなるようにした。以後患者発生はなくなった。

 例2:ポルトガルのあるリゾートホテルに滞在した英国の団体旅行者のうちから5名の患者が発生した。ホテルには空調施設はなかったが,太陽熱利用の温水循環システムがあった。これを塩素消毒にすることにして以来,患者発生はない。

 例3:レジオネラ院内感染例が11例,地方の総合病院で発生した。8名が入院患者であり,2名が病院職員で,のこり1名が外来者であった。L. pneumophilaが病院の冷暖水循環システムと空調の冷却水系統から分離同定された。4名の患者連鎖は,夏期に入り空調冷却水塔が稼働しはじめて2週の間に発生したが,それ以前にも3名の患者発生はあった。冷却塔を清掃し,間欠的に塩素消毒をしても患者発生はやまず,院内の給水系を塩素消毒してはじめて発生はおわった。遊離残余塩素濃度を冷水系で1〜2ppmとし,温水を55℃としたのである。ところが1年後,あらたに1名の院内発生があった。その患者は余備の加熱器が使用された日に入浴ならびにシャワーを使っている。こうした加熱器の底にたまっている残渣の中に,L. pneumophilaが検出されるのがしばしばで,この中の温度を常時70℃に維持することはこの菌の根絶に有効である。

(CDC,MMWR,32,44,1983)






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