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22歳の女性が妊娠30週において早期破水をおこし,4日後,子宮の軟化と不快な分泌液を伴って発熱した。帝王切開によって胎児を取り出した。手術直後の血液培養を48時間後に血液寒天に継代し,10%の炭酸ガス下あるいは嫌気状態での炭酸ガス培養を実施した。3日後に,両平板上に微小コロニーを観察し,Mycoplasma hominisであることが推定されたが,これは後にマイコプラズマレファレンスラボラトリー(MRL)で確認された。
もう1例の20歳の女性は,やはり妊娠30週時に帝王切開をうけ,2日後に発熱した。滲出液をにじませている創口を綿棒でふきとり,それを血液培養した。手術後4日目のものの7日培養を血液寒天に継代し,上記のような炭酸ガス培養を実施した。この例でもM. hominisが分離,確認された。
44歳の女性が子宮切除手術を受けた。患者は以前に骨盤内の炎症性疾患を経験しており,そのため癒着があった。腹壁創傷が炎症状態となり,そこからM. hominisが手術後1週目に純培養の形で分離された。
以上のM. hominisは3株ともテトラサイクリン感受性で,抗生物質投与で早急に治癒した。生殖道におけるM. hominisは,産後発熱敗血症,骨盤内炎症,腎盂腎炎の原因のひとつに疑せられてきた。M. hominisは日常の血液培養地で発育するが,目に認められる変化がないので,一般にはこれを血液寒天に継代して数日インキュベイトすると,微少集落が観察される。発育は95%の窒素,58%のCO2のもとでもっともよいが,10%のCO2でも嫌気的CO2のもとでも可能である。菌体は従来のグラム染色ではほとんど検出できないが,押印薄層によって,典型的なレース状グラム陰性集落をみることができる。カタラーゼ,オキシダーゼ陰性である。
M. hominisはふつう検査室から報告される習慣が乏しいため,1975〜82年における分離報告例は88であり,1ヶ月に1例の割である。
(CDR,84/08,1984)
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