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Vol.5 (1984/5[051])

<国内情報>
埼玉県における輸入感染性腸炎


 1983年の埼玉県における腸管系伝染病病原菌分離数は86例あり,輸入例は38.4%であった。コレラ菌は3例で輸入例であった。推定感染地はタイ(1例),シンガポールまたはマレーシア(2例)であった。

 赤痢菌は74例で輸入例は27例(37.0%)であった。推定感染地はインド(7例),タイ(6例),フィリピン(5例),スリランカ,ネパール(2例ずつ),以下インドネシア,台湾,アフリカ,南米であった。

 チフス菌は8例で,輸入例が2例(25.0%)であった。この2例はいずれも帰国後1ヶ月以上経過して発病した。推定感染地は韓国およびインドネシアであった。

 パラチフスB菌(d−酒石酸利用+)は1例で輸入例であった。推定感染地はインドネシアであった(表1)。

 埼玉県の海外旅行者下痢症病原菌検査は,797件実施された。コレラ菌(0.1%),赤痢菌(2.6%),パラチフス菌(0.1%),チフス・パラチフス以外のサルモネラ(10.4%),腸炎ビブリオ(2.8%),NAGビブリオ(0.8%)および病原大腸菌(30.5%)が検出された。

旅行地別における病原菌検出状況の特徴をみると,インド方面旅行者は赤痢菌検出率が高く,フィリピン・タイ方面旅行者は腸炎ビブリオ属及びその他のビブリオ属の検出が高率であった(表2)。

病原菌検出例の354例中同一人から複数菌種検出された例は80例(22.6%)にみとめられた(表3)。

 輸入例サルモネラは86株34菌型で,その主な菌型はS. anatum(14株),S. blockley(7株),S. senftenberg(5株)以下S. typhimurium,S. derby,S. agona,S. krefeldなどであった。

 腸炎ビブリオの輸入例22株の血清型は,O4:K8(6株),O4:K10(3株)以下O1:K1,O1:K56,O3:K6,O3:K7,O4:K4,O4:K11,O4:K12であった。

 病原大腸菌は,輸入例243例から269株検出された。病原大腸菌血清型(EPEC)は,O26,O44,O55,O86,O111,O119,O125,O126,O128,O146が検出され,組織侵入型(EIEC)はO28,O124,O143,O144,O152,O164が検出された。毒素産生型(ETEC)は病原大腸菌分離株数の66.9%であった。



埼玉県衛生研究所 大関 瑶子 山口 正則 首藤 栄治 松岡 正


表1.埼玉県の腸管系伝染病病原菌検出状況(1983年)
表2.旅行地別病原菌陽性率(1983年)
表3.海外旅行者の重複感染80例の病原菌(1983年)
表4.海外旅行者の病原大腸菌(1983年)





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