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Vol.5 (1984/6[052])

<外国情報>
髄膜炎菌性心嚢炎の一例−英国


 29歳の白人女性が4日間,発熱,不快感,そして強い筋痛を覚えたのち,本年1月14日に入院した。入院6時間前,急に呼吸困難,激しい後胸骨部疼痛を訴え,とくに吸気が悪かった。発熱,多少の意識混乱,頻呼吸そして末梢循環の悪化があった。両肺への吸気量は減少していたが,局所的には特に異常はみられなかった。ヘモグロビン14.7g/dl,白血球数12.7×109/l,血小板数89×109/l,血液塗抹標本では,多形核白血球増多と中毒性顆粒がみられた。入院時の胸部レントゲン像は正常であった。

 6時間ごとに1gのエリスロマイシンを静注して治療を開始した。24時間後平熱となったが,心不全の徴候がでてきた。レントゲン撮影を繰り返しているうちに,心臓の肥大と両側の肋膜滲出液を認めるようになり,また,心嚢滲出液の存在も疑われたので穿刺したところ,200mlの膿状液を得た。

入院時に血液培養をしたところ,Neisseria meningitidis C群を検出した。心嚢液を顕微鏡でみると,多数の多形核白血球とその中にグラム陰性双球菌がみられたが,培養の方は陰性であった。血清を寒冷凝集反応でしらべると,抗体価は入院時の2から,12日後には64に上昇した。

 エリスロマイシンの治療は2日後に中止し,ベンジルペニシリンの静注(6時間ごとに900mg)にかえた。心嚢からのドレナージを8日間放置した。症状はよくなり,2月5日に退院し,以後ペニシリンの経口投与にきりかえて,4週間継続した。

 原発性の髄膜炎菌性の化膿性心嚢炎が,髄膜炎を伴なわないで単独発生することはめずらしく,これまでに12例が報告されているだけである。

(CDR,84/14,1984)






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