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アデノウイルス感染症は極めて多彩で,血清型が多く,また,1つの型でも種々の臨床症状を起こす。アデノウイルス感染症の代表的な疾患としては咽頭結膜熱と流行性角結膜炎がある。厚生省サーベイランス事業の患者発生状況によると,この両疾患の発生は夏に多く,また,ほぼ1年ごとに流行の波があり,昨年(1983年)は流行年であった。ウイルス分離状況をみると,患者発生数のピークに一致して6〜9月を中心にして(12ペ−ジ・検出ウイルスの月別集計参照)アデノウイルス全体としては1187株が検出され,型別では3,8,19型が例年よりめだって多く検出された(図1,表1)。ひきつづき,本年夏も患者発生数は増加中で,今後ウイルス検出報告数の増加が見込まれる。
1983年1月から1984年6月までにアデノウイルスが検出された1442例中,症状の記載された1325例についての臨床症状を表2に示した。発熱がもっとも多く707例(53.4%)報告されている。次いで上気道炎576例(43.5%)で,これらの症状のものからは3型が圧倒的に多く,さらに2,1型が多く検出された。一方,角・結膜炎は516例(38.9%)に報告され,これでは3型の他に8,19,4型の順に多く検出され,とくに8および19型では検出数の85%以上が眼の疾患を伴っていた。胃腸炎は224例(16.9%)と比較的多いが,便中のウイルスを電顕で検出した例が含まれるため,型未同定株の報告が多くなっている。
分離検体の種類として,角・結膜炎を起こす型は眼ぬぐい液からの分離が報告されるが,全体としては鼻いんこうぬぐい液からの分離が最も多く(54%),また,便からも検出される(表3)。
アデノウイルスが検出された者の年齢は,1442例中,0〜4歳678例(47%),5〜9歳(24%)と低年齢層に多く,これらは発熱,上気道炎が中心であるのに対し,20歳以上(17%)のものはほとんどが角−結膜炎患者で,とくに8および19型の感染は成人が多い。
図1.流行性角結膜炎と咽頭結膜熱の患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別アデノウイルス型別検出数
表2.臨床症状別アデノウイルス検出状況(1983年1月〜1984年6月)
表3.検体の種類別アデノウイルス検出状況(1983年1月〜1984年6月)
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