|
1984年4月中旬に札幌市内の1中学校に集団かぜの発生がみられた。その後北海道の全域にわたって流行がみられ,6月上旬に患者発生のピークがあり,同月下旬にようやく終息した(図1)。
休校数は25,学年閉鎖数は50,学級閉鎖数は80であった。休校を学校別にみると,幼稚園1,小学校9,中学校11,高校その他が4で,中学校が最も多かった。
臨床症状の特徴は38℃〜40℃の高熱が数日間持続する例が多くみられた。
流行予測インフルエンザ感染源調査と流行校よりの患者材料から17株のインフルエンザB型が分離された。1株のみが発育鶏卵,他はすべてMDCK細胞で分離された。
前年度のワクチン株であるB/Singapore/222/79のフェレット免疫血清(ホモロガスウイルスに対するHI価は1024倍)に対して札幌市衛研で分離したB/札幌/1/84は128倍,北海道衛研で分離したB/北海道/1/84は256倍で抑制された。
ワクチン株と分離株を用いて患者のペア血清について北海道衛研においてHIテストを実施した結果を表1に示す。急性期血清にワクチン株と分離株との間に2管から3管の差があり,1件は分離株によってのみ陽性であった。
これらの結果から,1984年4月から6月にかけて北海道に流行したインフルエンザBはワクチン株と比較すると変異株であり,患者の急性期血清に分離株に対するHI抗体が極めて低かったことから今後も流行する可能性があると考えられる。
北海道立衛生研究所 桜田 教夫,野呂 新一
札幌市衛生研究所 熊谷 泰光
図1.インフルエンザ様疾患患者発生数
表1.ワクチン株と分離株に対する患者ペア血清のHI価
|