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1984年1月19日に鼠咬熱(RBF)が報告された。患者は54歳の女性の心理学部学生で,1月9日に実験室ラットに左人指し指の中指節の背面と腹面を咬まれた。彼女は即時,学生保健センタ−で傷口(きれいな刺し傷と記載されていたが)を消毒され,破傷風トキソイドの接種を受けた。患者はその指を熱い石鹸水につけるよう指示をもらって帰宅したが,12時間以内にその指は腫れてズキズキ痛み出した。彼女は翌日保健センターで再診を受け,地域の病院へ入院した。近位の指節間の間節から手掌の隆起の方へ手のひらの上を下方へのびている屈筋の腱に沿って紅斑と腫脹を伴っており,患者は無熱だった。腋窩のリンパ節が腫大していた。白血球数7200/mm3(好中球69,リンパ球26,単球4,好酸球1),尿は正常。
初めに,1月10日の傷口から採取した血液と滲出液の培養を行ったが陰性だった。患者はペニシリンアレルギーだったので,黄色ブドウ球菌または溶連菌の感染を疑って,エリスロマイシン500mgを6時間ごとに48時間投与された。1月10日から12日の間に38.3℃の発熱をし,悪寒,関節痛,軽い吐き気,全身の点状出血疹と頭痛があり,指は激しく過敏になった。1月12日に腱しょうが外科的に排膿され,クリンダマイシン450mgを6時間ごと48時間静注された。24時間以内に平熱に下がり,腋窩リンパ節の腫れも減少した。1月14日に,外科処置時に採取された組織より,グラム陰性桿菌が分離された。この病原体は後で州の微生物病研究所によりStreptobacillus moniliformisと同定された。この病原体はEnterobacteriaceaeとある種の他のグラム陰性菌の同定のためのAPI20Eシステムでは増殖せず,Kirby−Bauer法を用いる薬剤耐性試験でも増植しなかった。1月14日,患者は退院し,テトラサイクリン500mgを6時間ごと8日間投与された。再発は報告されていない。
MMWR編者註:RBFはS. moniliformisとSpirillum minusを病原とする2つの疾病に対して,それらが臨床的,疫学的に類似しているため1つの病名が与えられたものである。前者によるRBFは潜伏期3〜10日で後者は1〜3週である。RBFの死亡率は治癒しなかった例では10%に達する。本症例は短い潜伏期と化膿した傷口の状態からRBFと何らかの他の未同定の病原との混合感染が示唆される。
RBFは合衆国においてはまれな疾病であるが,正確な頻度はわからない。治療にはペニシリンと場合によりストレプトマンシンとテトラサイクリンの併用が一般的である。RBFに対するクリンダマイシンの使用は報告はあるものの,これまで詳しい実験的あるいは臨床的な効力についての研究はなされていなかった。CDCにおける感受性試験を行った2株のS. moniliformisはクリンダマイシンに感受性で,うち1株はエリスロマイシンに耐性だった。
(CDC,MMWR,33,22,1984)
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