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ウイルス性下痢症の病原としてはロタウイルス以外に,アストロ,カリシ,パルボ様など少なくとも数種の小型ウイルスが電顕によって検出されているが,分離同定についてはロタウイルスのみがELISA法,R−PHA法,Latex凝集反応など免疫反応を利用した検出法がキット化されているほか,近年細胞培養による分離同定も可能となった。このため,ロタウイルスの検出報告のうち,電顕以外の方法による検出報告数が年々増加している(表1)。
一方,その他の小型下痢症ウイルスの検出法はまだ電顕のみで報告数も少ない。
感染症サーベイランス情報の乳児嘔吐下痢症,その他の感染性下痢症の患者発生状況(図1)は,毎冬,これら疾患の流行が繰り返されていることを示している。夏期には乳児嘔吐下痢症は非常に少ない。
1983年7月から1984年6月までの1年について胃腸炎を伴った患者からの月別ウイルス検出状況をみると(表2),ロタウイルスは12月から3月にかけて多数検出されている。また,同じ冬期に多数検出されるインフルエンザの患者の中に胃腸炎を伴うものがみられる。その反応にエンテロウイルスは夏期に,アデノウイルスは年間を通じて胃腸炎と関連して検出されている。検体の種類としては,ロタ,その他の下痢ウイルスは全数が便から検出されているが,エンテロおよびアデノウイルスは便からの分離は約半数であり,インフルエンザは咽頭ぬぐい液のみ検出されている(表3)。胃腸炎患者の便から検出されたウイルス数を月別に図2に示した。
1983年7月より1984年6月にロタウイルスの検出されたもの1024例中0〜4歳の930例について主な臨床症状をみると,胃腸炎は全検出数の94%,発熱は33%,上気道炎は15%において報告されている。
下痢症患者の年齢分布は,ロタウイルスを病原と推定する乳児嘔吐下痢症では0歳が過半数を占めるが,その他の感染性下痢症は9%足らずと少ない(表4)。しかし,これには臨床診断上の区分の問題があり,たとえば0歳は乳児嘔吐下痢症とするが1歳以上はその他の感染性下痢症として報告する場合が考えられる。そこで,検出ウイルス別に胃腸炎患者の年齢分布をみると,ロタウイルスは0〜4歳が92%と大部分を占め,特に0歳の割合が高い。他のウイルスではアデノおよびエンテロウイルスの感染において胃腸炎症状を報告した者の22%および18%が0歳であり,ロタウイルス以外の下痢症でも0歳の占める割合は少なくないと考えられる(表5)。
図1.乳児嘔吐下痢症とその他の感染性下痢症の患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.胃腸炎の症状のあったものの便からの月別ウイルス検出状況
表1.ロタウイルスの検出方法
表2.胃腸炎の症状のあったものの月別ウイルス検出状況(1983年7月〜1984年6月)
表3.胃腸炎の症状のあったものの検体の種類別ウイルス検出状況(1983年7月〜1984年6月)
表4.1983年7月〜1984年6月の下痢症患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)(年齢不詳を除く)
表5.胃腸炎の症状のあったものの年齢分布(年齢不詳を除く)(1983年7月〜1984年6月)
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