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Vol.6 (1985/1[059])

<国内情報>
広島市における異型肺炎の流行


異型肺炎の4〜5年の周期性を持った流行は既によく知られており,広島市においても前回1980年の流行から,4年後の流行が以前予測されていた。表1に1983年から1984年10月までの当市における異型肺炎患者報告数(23定点)およびM. pneumoniae(M. pn)の分離状況を示した。1983年の患者数は178人,月平均14.8人で11月頃から若干の増加がみられていた。1984年には5月頃より患者数の急激な増加がみられ,7月の194人をピークとし,10月までに690人,月平均69人に達した。10月末現在患者数は緩慢な減少傾向を示している。検体数は,患者数と同様に5月頃から増加がみられた。M. pnの分離は,Chanock培地と二層培地(メチレンブルー加)を用いて202検体から103株(50.9%)を分離した。増殖用培地としてChanock培地および二層培地を併用し比較できたのは123例であった。そのうち,分離陽性は両培地からが39株,Chanock培地からが5株,二層培地からが9株の合計53株であった。

病日別の分離状況をみると,検体はいずれも第3病週以内に採取され,分離可能であったのは,第15病日までであった。検体数,分離数の多かったのは第5病日と第6病日であった。第3病日から第8病日までの6日間の検体数および分離数はそれぞれ全体の約76%と83%を占めた。集団流行事例は市内西地区の1小学校で発生した。春先から発生の兆しをみせたこの流行は5月,6月,7月と徐々に増え続けたが,児童間の接触機会の少ない夏休みの8月に入って終息がみられた。学年別には低学年に患者数が多く,高学年になるに従って減少し,45検体から28株(62.2%)のM. pnを分離した。

患者の年齢別分離状況を表2に示した。被検者の年齢層は1歳未満から37歳までに分布していた。検体数は6歳の34件をピークとし,4歳から8歳の年齢層に多く,全体の約66%を占めた。分離数は8歳の17株をピークとし,5歳から8歳の年齢層に多く,全体の約58%を占めた。4歳児以下の乳幼児は45検体から19株のM. pnを分離した。性別では,男子が105件から51株(48.5%),女子が97件から52株(53.6%)のM. pnを分離し,男女間に有意な差はみられなかった。

異型肺炎流行時にみられる家族内発生は,今回14例に遭遇した。この中で,同胞の同時発症がみられたのは,分離陽性が2例,陰性が3例の計5例であった。同胞感染の潜伏期とされている2〜3週間後に発症がみられたのは9例で,3例が分離陰性,6例が分離陽性であった。そのうち,1例は兄弟3人に発症がみられ,いずれの検体からもM. pnを分離した。これらの症例はマイコプラズマの家族内伝播を示唆するものであった。



広島市衛生研究所 山岡弘二 萱島隆文 伊藤文明 奥備敏明 荻野武雄


表1.異型肺炎患者報告数およびM. pneumoniaeの分離状況
表2.異型肺炎患者年齢別M. pneumoniae分離状況





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