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Vol.6 (1985/3[061])

<外国情報>
1985/86シーズン用インフルエンザワクチン推奨組成,WHO


1984.10-1985.2のインフルエンザ活動:このシーズンは多くの国で低調だったが,北米,ヨーロッパ,アジアでは流行が報告された。AHが主流で,AHとBの流行は少なかった。

AHウイルス:10月ニュージーランドで流行。12月イタリア,ノルウェー,ソ連,英国,米国で主に散発例。1月にノルウェー,ソ連,米国,北中国,東西ドイツ,英国で流行。散発例はカナダ,フィンランド,フランス,香港,オランダ,スウェーデン,スイスから報告された。

AHウイルス:11月英国の1学校で集発。散発分離例は中国。フランス,スイス,米国。

B型ウイルス:9〜12月トリニダッドトバコ,10〜12月日本の学童流行,1月ギリシャ,インドネシア,英国の流行。散発例分離報告は中国,フランス,ニュージーランド,ポルトガル,シンガポール,スウェーデン,英国,米国。

抗原分析:このシーズンのAHのほとんどはA/フィリピン/2/82類似株だが,変異株もみられる。A/カーン/1/84に代表される変異株は数国で分離され,HI試験でA/フィリピン/2/82の血清に2〜4管低く反応する。一方,A/カーン/1/84に対するフェレット血清は比較的株特異的である。英国および米国のAH3N2株の約20%がこの株タイプであった。少数分離されたAH株はA/チリ/1/83類似株である。ポルトガル,スウェーデン,ソ連,英国で分離されたB型はB/ソ連/100/83類似株である。トリニダッドトバコの流行株多数は反応が弱く,抗原性をきめるのは困難だった。

血清調査:1984年に英国と米国で各年齢の血清抗体分布が調査され両国で似た結果だった。A/フィリピン/2/82およびA/カーン/1/84(H)のHI抗体は6歳以上で40〜80%,5歳以下は30〜40%に検出された。A/チリ/1/83およびA/ビクトリア/7/83(H)に対しては6歳以上で30%〜70%だが5歳以下は20〜30%だった。B/ソ連/100/83に対しては全年齢で30〜80%に抗体が検出された。フランスとノルウェーでいずれの型にも保有率が低いことが報告された。

不活化ワクチンの試験:A/フィリピン/2/82(H),A/チリ/1/83(H),B/ソ連/100/83のHAをそれぞれ10〜15μg含む不活化ワクチン1回投与の抗体反応が英国と米国で調査された。A/フィリピン/2/82に対してHI1:40以上の保有率は接種前後で10〜20%から80〜100%(青年)および50%〜80%(年長者)でA/カーン/1/84に対しても同程度の反応がみられた。接種前1:10以下の者でも接種後90〜100%の抗体がみられた。A/チリ/1/83(H)に対しては接種前後の青年で35〜50%から90〜95%,これはA/ビクトリア/7/83に対しても同様にみられた。B/ソ連/100/83では接種前後で20〜30%から70〜90%(青年)および40〜70%(年長者)だった。

推奨ワクチン:3種の型が散布しつづけているが,1983/84シーズン以来新変異株は主流になっていない。そのうえ1984/85シーズン用ワクチンはA/カーン/1/84(H),A/ビクトリア/7/83(H)等の変異株に対して十分な抗体を産生している。したがって1985/86シーズンのワクチンは前回同様,A/フィリピン/2/82(H)類似株,A/チリ/1/83(H)類似株,B/ソ連/100/83類似株が推奨される。

年少児を除けば相当数が3種の型のインフルエンザに最近感染しているので,これらには不活化ワクチン1回接種でいいだろう。過去にインフルエンザワクチンを受けたことのない年少児は4週間隔で2回投与が必要だろう。ワクチン組成は去年と同じだが,1984/85の接種は1985/86の接種を免除することにはならない。

(WHO,WER,60,No.8,1985)






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