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1984年のライサーベイランス年(12月1日〜翌年11月30日)にCDC基準に合致するライ症候群患者は190例報告された。まだ多少増加がみこまれるにしても,これは米国ライ症候群サーベイランスシステム開始(1973年)以来の年間最低数である。症例は42州より報告された。男性51%,白人94%,黒人3%,アジア系またはアメリカインディアン系3%,学童年齢が多く,10〜14歳38%,0〜4歳29%,5〜9歳18%,15〜19歳13%,20歳以上2%。患者の94%に嘔吐や神経症状が出現する2週間以内に前駆疾患がおこっている。内訳は呼吸器症状76%,水痘発疹15%,呼吸器症状のない下痢2%,発熱だけなどその他7%。大部分の患者の入院は冬〜春で,呼吸器疾患とくにインフルエンザの流行を反映している。さらに少数の水痘関連ライ患者がこの時期に入院した。昏睡前の段階に入院した患者が多く,このうち56%は昏睡に陥った。転帰が報告された173名(患者の91%)中45が死亡,死亡率は26%であった。
編者註:従来の年間発生数は少なくとも部分的にインフルエンザ流行の大きさまたは型を反映した。しかし,1984年はインフルエンザAH1N1とBの流行が前2年より大きかったが,ライ症候群患者発生数は最低となった。1981年以降の発生数の低下は10歳以下がそろって減少したためで,10〜19歳ではインフルエンザ流行と一致して増加した。水痘関連例は10歳以下の各年齢で著明に低下した(1981年77,1984年26)。この理由は不明だが少なくとも全部が上記2疾患の発生を反映するものとは考えられない。1つの説明は最近幼児でサリチレートの使用が減少していることである。
1982年にSurgeon General of Public Health Serviceはインフルエンザまたは水痘の子供にサリチレート製剤を与えることに反対する勧告をした。Secretary of Health and Human SrtvicesはNIH,FDAおよびCDCのメンバーから成る研究班を任命し,研究の実行可能性と方法論の確立のためにパイロット研究を1984年2〜5月に実施した。対象はライ患者29例と対照143例で,患者の97%が発症前の呼吸器疾患または水痘中にサリチレートを投与されたのに対し対照群では同一疾患中投与率が23〜59%だった。
このパイロット研究で明らかにされたリスクは前研究と同様かむしろ高い。この結果にもとづきInstitute of Medicine, National Academy of Sciencesは1月8日次のように発表した。
研究班は本研究を実施すべきである。パイロット研究の結果はすみやかに発表すべきである。パイロット研究の結果はライ症候群とアスピリン使用の間に強い関係を示しているから,本研究の終了をまたず対策を講ずべきである。
パイロット研究の報告はまもなく公表される。この結果からみて,医師,親,自分で薬を飲む年長児には,インフルエンザや水痘の子供へのサリチレートの使用に伴ってライ症候群のリスクが高まると考えられることを忠告しつづけるべきである。
(CDC,MMWR,34,No.1,1985)
TABLE1.Incidence of Reye syndrome, by year - United States, 1974 and 1977-1984
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