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Vol.6 (1985/4[062])

<国内情報>
AIDS国内患者情報


厚生省に設置している「AIDS調査検討委員会」(委員長塩川優一順天堂大学名誉教授)において,東京都から報告のあった順天堂大学医学部付属順天堂医院(内科松本孝夫医師)の症例を検討した結果,AIDSである疑いが極めて濃いとの結論となった。

患者の概要

1.国籍 日本

2.年齢 36歳

3.性別 男性

4.職業 アーチスト

5.居住地 アメリカ

6.医学所見(臨床医学的,免疫学的,ウイルス学的)

1)AIDS患者多発国において,多数の同性と頻回の性的関係をもっている。

2)同棲していた男性がAIDSとなり58年に死亡している。

3)自覚症状として著しい疲労感,リンパ節腫脹,関節痛・筋肉痛・血小板減少(1ヵ月以上持続)がある。

4)リンパ球検査でTh/Ts比の逆転(0.3)が見られる。

5)ウイルス学的検査でLAVに対する抗体が陽性である。

AIDS調査検討委員会意見:AIDSの臨床診断の手引き,AIDSの免疫学的診断の手引きおよび現在までのAIDSに関する学術的な知見をもとに検討した結果,本委員会はこの症例に対しAIDSである疑いが極めて濃いとの結論に達した。

防疫対策:「後天性免疫不全症候群(AIDS)の実態把握に関する研究班」による研究結果では通常の社会的接触でAIDSに感染することは無いとのことである。

この患者は,現在アメリカに居住していて,昭和59年12月に日本に一時帰国したとき受診したもので,日本滞在中(昭和60年1月中旬アメリカへ出発)同性,異性とも性的関係は持たなかったことから,この患者からの二次患者の発生は無いものと判断される。



厚生省保健医療局感染症対策課





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