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Vol.6 (1985/5[063])

<国内情報>
インフルエンザ様疾患発生報告(1984年度最終版)


本報(第14報)をもって,今シーズンのインフルエンザ様疾患発生報告を終了する。終了にあたり今シーズンの発生報告について概説する。

今シーズンの本疾患の集団発生は,1984年10月25日青森県の小学校で初発した。これは昨シーズン(1983〜84年)と比較すると,約1ヶ月遅い初発であった。その後1984年の末までに18都道府県1指定都市からの集団発生報告があり,1984年中の累計患者数は10,383人となった。これは昨シーズンの同期の約3分の1であり,過去5年間でも比較的小規模の流行であった。ところが1985年に入り,特に1月中旬から下旬にかけて急激な増加があり,ピーク時の1月27日から2月2日の1週間には新しく発生した患者数は281,532人にも及んでいる。最も発生が遅れていた徳島県からは2月19日に報告がなされ,最終的には全都道府県・指定都市からの報告があり,累計患者数は105万2240人となった。これは,過去5年間では1981〜82年,1979〜80年のシーズンに次ぐ患者数となった。

最終報を出した時期における過去5ヶ年の休校数等を比較すると,休校数,学年閉鎖校数は1979年または1981年よりも少ないが,学級閉鎖校数は過去5ヶ年で最高となっている。

流行の推移と規模を都道府県別に見ると,シーズン当所は初発地の青森県および岩手県で多く,1985年に入って1月中旬のピーク時には東京都,神奈川県,大阪府など大都市を中心として多発し,その後北海道で3月上旬まで1万人以上の患者が発生していた。

最終的に最も多い患者発生を見たのは東京都で219,586人で第2位が北海道の193,014人,第3位が大阪府の74,487人で,この3都道府で全体の約46%の患者数を占めている。地区別にみると,関東地方,北海道を含む東北地方,近畿地方に多く,中国・四国に少ない。

今シーズンのインフルエンザの流行株はB型であった。新潟県,三重県でA香港(AH)が,福岡県でAソ連型(AH)が分離されたほかは,神戸市を除く全都道府県・指定都市でB型が分離されている。調査対象施設外からのウイルス分離報告も37件あったが,奈良県,福島県でA香港型,福岡県でAソ連型が分離されたほかはやはり全てB型であった。

分離されたウイルスの全てについて抗原分析は終了していないが,病原微生物検出情報に速報として掲載された「今季インフルエンザウイルスの抗原分析」(国立予防衛生研究所 武内安恵)によると,最近の日本の分離株の大部分がB/ノルウェー/1/84型株とみられるが,中にB/青森/2/84に代表される変異株と,これよりもさらに変異が大きいB/山梨/510/84またはB/宮城/2/85型株が少数みられているとのことである。

また過去5年間の流行株と代表株をみると,1979〜80年にはA香港型,Aソ連型とともにB/神奈川/3/76に代表されるB型,1980〜81年にはA香港型,Aソ連型とともにB/シンガポール/222/79に代表されるB型,1981〜82年にはA香港型とともにB/シンガポール/222/79に代表されるB型による流行が起こっているが,1982〜83年,1983〜84年の2シーズンはB型による流行がなく,B型に対する抗体保有率が低かったものと思われる。しかし,今シーズンにB型による大流行に至らずに終息したのは,B型はA型ほど大きな抗原変異を起こさないことおよび前年度よりインフルエンザワクチン中にB型ウイルス含量を増量させたことによると思われる。

なお,今週分は新たに発生した患者は1,229人のみで14府県から報告があったのみである。またウイルス分離報告は1件もない。



厚生省保健医療局感染症対策課


インフルエンザ様疾患年次別週別発生状況





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