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Vol.6 (1985/6[064])

<特集>
ヘルパンギーナ,1984


ヘルパンギーナは毎年6〜7月に集中して患者発生が報告されているが,特に1984年は第27週に一定点当たり患者発生数が12.3と,1981年情報収集開始以来最高のピークを示した(図1)。年間の全国平均一定点当たり患者発生数は1982年59.0,1983年47.6に対し,1984年には97.5と倍増した。この発生数は水痘(サーべイランス対象疾病中,毎年発生数が2番目に多い疾病)の108.6に迫る多発であった。また,地域的にみると,57県市のうち52県市において年間の一定点あたり患者発生数が50.0を上回る全国的な流行であった。

年齢群別にみると0〜4歳が82%と大部分を占めた。この年齢群の割合は1982年および1983年とほとんど同率で低年齢層が流行の主体となっている傾向は変わっていない(表1)。

1984年にヘルパンギーナの症状のあったものからのウイルス検出はこれまでに761例が報告されている。そのうちコクサッキーA10(CA10)が449例(59%)で圧倒的多数を占めた。このほかCA5 97例(13%)とCA4 82例(11%)がめだち,この3つの型の流行が重なったことが,6〜7月の大流行の原因と考えられる。ほかにCB群45例,アデノ34例,単純ヘルペス28例などが1984年中にヘルパンギーナ症例から検出された(表2)。

761例中611例は鼻咽喉から分離された。このうちCA10が310例,CA5は95例,CA4は79例であった。また,177例は便より分離され,このうちCA10は151例,CA4は11例,CA5は2例であった。

過去3年間のヘルパンギーナの主要な病原はCA群の特定の型のウイルスで,図2に示したように各年ともこのうちの2〜3の型が流行している。特にCA10についてみると,1979年の情報収集開始以後は1981年に小流行があったが,1984年にはそれをはるかにしのぐ検出数が25県市より報告され,全国的な流行を裏付けている。CA4とCA5は東日本を中心に検出された(表3)。

ウイルス検出例でヘルパンギーナとともに報告された臨床症状は発熱,上気道炎,口内炎,発疹,水泡で,その他の症状は少なく,CA群では髄膜炎など重い症状はなかった。

同一個体で臨床症状としてヘルパンギーナと手足口病が同時に報告されたのは10例(CA10 8例,CA5 2例)であった。1984年にはCA10による手足口病が57例報告された。これはこの年の手足口病からの分離報告総数の1/3を占めた。

ヘルパンギーナ患者の年齢別にウイルス検出状況をみると(表4),検出数は1歳が最も多い。患者発生の多かった0〜4歳からの検出数はCA4,5,10についてそれぞれ91.5%,85.4%,86.7%であった。



図1.一定点医療機関当たりヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.ヘルパンギーナ年齢群別患者発生状況(1984年)(感染症サーベイランス情報)
表2.ヘルパンギーナの症状のあったものの月別ウイルス検出状況(1984年)
図2.ヘルパンギーナの症状のあったものの年次別ウイルス検出状況
表3.ヘルパンギーナの症状のあったものの県・政令市別ウイルス検出状況(1984年)
表4.ヘルパンギーナの症状のあったものの年齢別ウイルス検出状況(1984年)





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