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Vol.6 (1985/6[064])

<外国情報>
ワクチン関連ポリオ症例−英国


24歳独身男性(A)が1984年4月28日発症,ポリオと診断された。前頭痛,両腿痛,排尿困難,大体幹脱力,両肢の非対称性下肢運動神経脱力があった。膀胱機能は2週で回復したが,4ヶ月後の退院時,神経症状はほとんど回復しなかった。

4月14日Aが出席した結婚式に同席した6ヶ月および2歳の子供が2人とも4月5日にポリオ生ワクチンの投与をうけていた。また,この子供達のおば(B)が4月18日,発熱,脱力感とうとうと状態があったと述べている。Aは子供達との直接の接触は否定したが,有症後5日目のBと車に同乗している。

Aの5月3日と7日の糞便から3型ポリオウイルスが分離された。9,12,23日の材料は陰性だった。分離ウイルスはVan Wezel型内中和試験でワクチン様と同定された。5月2日のAの血清抗体価はポリオ1,2,3型に対しそれぞれ320,113および80であった。この抗体価は以前に免疫があったことを示唆する。4倍抗体上昇は確認できなかった。

他の接触者およびワクチン投与児のウイルス分離は陰性だった。Bの5月3日の血清はポリオ1,2,3型に対しそれぞれ14,640および40で以前からの免疫を示唆するものであった。

リスク集団は20歳前半で,彼らの多くはワクチンも自然感染もうけていない。血清調査では1963〜68年出生者群が抗体レベルが低かった。本報告例の分離ウイルスはワクチン様なので,細菌ワクチン投与された子供からBを経由した感染ルートが考えられる。

ワクチン関連麻痺症例の平均年間リスクは3/5百万doses,1/5百万接種者,2/5百万接触者である。CDRへのポリオウイルスの分離報告は年間300〜600株あり,ウイルスが国内にサーキュレイトしていることを示している。このうち3%は野生株といわれる。報告は冬に多い。

ワクチン関連症例の多くはふつうワクチンをうけた子供の親にみられる。本例は独身でワクチン投与児との直接の接触を否定しているので,ウイルスが家族外へ散布しうることを示す例である。

(CDR,85/07,1985)






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