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Vol.6 (1985/8[066])

<特集>
溶連菌感染症


図1は感染症サーベイランス情報による溶連菌感染症患者発生状況である。各年の発生パターンは酷似していて,毎年11〜12月にピークを示し,春季と夏休み期に減少する。患者の年齢(表1)は約半数が5〜9歳で,ついで1〜4歳が約4割を占めることから,幼児および低学年学童を中心に毎年流行がくりかえされていることがわかる。

感染症サーベイランスにおいて溶連菌感染症の報告対象とされているのは主として小児科定点における咽頭炎およびこれに発疹を伴う症例なので,その起因菌は大部分A群溶連菌である。これを反映して,医療機関におけるA群溶連菌の検出数の月別分布は患者発生状況とよく一致している(図2)。

これに対し,B群溶連菌は年間を通じほぼ一定数の分離が報告される。医療機関におけるB群菌は少数の新生児・小児からの分離を除けば大部分は基礎疾患を有する成人の泌尿器系や喀たんからの分離とみられるので,このような症例は感染症サーベイランスの溶連菌感染症の報告対象に含まれず,したがって患者数の推移とは関連していない。

A群菌について,最近数年間のT型別の動向をみると(図3),T−12型が最も多く,これ以外ではT−4,T−13,T−1,T−6などの型が多く報告されている。

一方,薬剤耐性頻度についてレンサ球菌感染症研究会の分担研究として都立衛生研究所で実施された猩紅熱患者由来のA群菌の成績をみると(図4),全体としてテトラサイクリン(TC)耐性が最も多く,ついで,クロラムフェニコール(CP),マクロライド系の順である。ペニシリン系およびセファロスポリン系に対する耐性菌は現在まで分離されていない。さらに,A群溶連菌では菌型と耐性パターンの関係に特異性があり,たとえばT−4型はTC単独耐性が多く,T−6型はTCとCP2剤耐性が多いのに対し,T−12型では多剤耐性が多いことが明らかにされている。



図1.一定点医療機関あたり溶連菌感染症患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別年齢群別溶連菌感染症患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.医療機関におけるA群菌およびB群菌の月別分離状況(1983年〜1984年)
図3.型別A群レンサ球菌検出状況1979年〜1983年(地研・保健所集計)
図4.猩紅熱患者由来A群レンサ球菌における薬剤耐性菌出現頻度の年次推移(猩紅熱研究会)





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