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Vol.6 (1985/8[066])

<国内情報>
A群溶血レンサ球菌と耐性菌


(東京都微生物検査情報第6巻第4号より一部省略して転載)



東京都立衛生研究所では,全国的組織であるレンサ球菌感染症研究会の分担研究として,約20年間にわたって,患者あるいは健康学童などから分離されたA群溶血レンサ球菌の各種抗生剤に対する感受性を測定し,その年次的傾向を検討してきた。

その間,ペニシリン系(PCs)およびセファロスポリン系(CEPs)薬剤に対する耐性菌は,1株も分離されず。βラクタム類薬剤の本菌に対する有効性が認められている。しかし,供試薬剤のうち,テトラサイクリン(TC)に対しては1963年頃より,クロラムフェニコール(CP)に対しては1967年頃より,また,マクロライド系(MLs)に対しては1970年頃より耐性株の出現がみられ,その後の動向は図(20ページ・図4)に示すとおりである。

耐性株の多くがある種のテンペレートファージを宿す溶原菌であり,そして耐性を担うプラスミドが耐性菌から感受性菌へ溶原ファージによって導入されることが実験的に証明されている。また,耐性導入には序列があり,初めはファージの1次感染により,TC単独耐性が現われ,次いで2次感染が起こり,CP耐性プラスミドが持ち込まれ,さらに3次感染により,MLs耐性が導入され,その結果,多剤耐性菌の発現となるという。

さらに,A群溶血レンサ球菌は,菌型と耐性パターンの関係に特異性があることも明らかにされている。例えば,4菌型はTC単独耐性のものが多く,TC・CP2剤耐性菌は非常に少ない。6型菌はTC単独耐性で止まっているものは少なく,容易にTC・CP2剤耐性に進むが,MLs耐性の出現はほとんどみられない。12型菌はTC耐性,さらにCP耐性獲得後,速やかに第3次耐性化が起こり,多剤耐性を獲得する。このような現象は菌型により耐性導入に難易があることによると考えられる。

以上のような理由から,A群溶血レンサ球菌の薬剤耐性菌の出現頻度の動向については流行菌を考慮に入れて論ずる必要がある。A群溶血レンサ球菌の感染防御抗原はM型特異タンパクであることが知られており,わが国では4型,6型,12型などがそれぞれ数年間隔で流行のピークを作ることが観察されてきたが,耐性菌の出現がこのような主要菌型の流行パターンに影響を及ぼすかどうかについて知るには,もう少し息の長い観察が必要なようである。






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