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4人のアメリカ人家族が1984年8月4日土曜日に米国を出,8月5日午後1時半頃,英国の酪農場にある小屋に住む妻の両親の家庭を訪問しローストラムの昼食をとり,午後7時には鮭サラダの缶詰を食べた。
8月6日午前2時頃妻が発病し,嘔吐,頭痛,下痢の症状を呈した。下痢はすみやかにおさまったが,頭痛と嘔吐が続き,8月10日に症状が急激に悪化して下痢が再発し,12日に入院,4日間経過後退院した。入院中患者便からサルモネラ・ニューポートが分離された。
検査結果:家族親類中他には誰も発病しなかったが,7人中6人がサルモネラ・ニューポートを排菌していた。排菌者中には酪農場長として雇われていた義理の父も含まれていたので,感染が消失するまで牛乳店に出入りを禁止された。牛乳店に出入りしていたほかの4人の酪農労働者1人からサルモネラ・ニューポートが分離された。生牛乳を飲用していたさらに18人の農場使用人とその家族の検便ではそれ以上の感染は見出されなかった。
商業用牛乳はすべて加熱処理されるが,米国からの訪問客を含め,農場使用人全員とその家族は246頭の牛がいる牧場で搾乳される生牛乳を飲んでいた。生牛乳の供給は9月7日に停止された。
濾過前後の生牛乳検体と濾紙についてサルモネラを検査したところ,ほとんどの日の牛乳が汚染されていた。
1984年8月初旬,農場の牝牛4頭が下痢をした。8月31日に採取されたそれら4頭の牛の直腸擦拭採取検体はサルモネラ陰性であったが,その当日に下痢していた他の1頭の牝牛はサルモネラ・ニューポートを排菌していた。9月12日と13日に全牧場から直腸擦拭採取検体がとられ,246頭中7頭にサルモネラ・ニューポートが検出された。感染牛はすべて隔離され,ストレプトマイシンの短期間投与が行われた。その後10日おきの直腸擦拭検体採取において,2回連続して検体が正常であった場合に牧場に帰された。抗生物質治療が拝菌時間を遅らせたり,保菌状態を作り出す危険性があるが,この場合には治療を受けた牛はすみやかに清浄化され,その後も清浄性を保持した。同時に改良酪農衛生計画が導入された。最後の排菌牛も11月29日には清浄であることがわかった。以来牛乳は清浄で,牧場は臨床的にサルモネラがない状態が続いている。
この出来事は,未処理牛乳摂取はやめるべきだという議論を支持するものである。
(CDR,85/23,1985)
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