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Vol.6 (1985/10[068])

<特集>
カンピロバクター腸炎


カンピロバクターがヒトの胃腸炎の原因菌であることが明らかにされたのは1970年代後半で,日本においても1980年頃から全国的に日常の細菌検査で検出されるようになった。1982年3月,厚生省は環境衛生局長通達によって,カンピロバクター疾患の集団発生については食中毒として行政対応をはかるよう指示した。食中毒統計に報告されたカンピロバクター食中毒は1983年は31件(患者数4652),1984年は39件(患者数4500)である。発生場所は学校(19件)が最も多く,ついで飲食店,旅館,事業所などで,数百人以上の発生がしばしば報告されている(病原体情報・集団発生速報)。原因食品としては鶏肉,牛肉などが多い。

図1は月別カンピロバクター検出数の推移である。報告の増加傾向は発生増加というよりは検査法の確立と普及によるものとみられる。季節的にみると,地研・保健所,医療機関では5〜6月が最も多く,夏休み期間にはやや減少し,9月〜10月再び多くなる。これに対し,伝染病院集計ではピークが顕著でない。この違いはカンピロバクターの感染が常在していて,夏季になると食中毒の形で広がることを示すものと解釈される。

医療機関ではカンピロバクターは腸炎起因菌報告数中で最も多く,その約半数を占める。地研・保健所報告は集団発生からの検出が中心であり,報告数はサルモネラについで多い。都市立伝染病院の集計は主として赤痢が疑われた患者からの病原菌検出成績である。赤痢,サルモネラについでカンピロバクターが多く,全検出数の12〜15%を占めている。

カンピロバクターは小児下痢症患者から検出される病原菌として最も頻度が高く,小児胃腸炎の重要な病因とされている。都市立伝染病院入院患者について最近4年間にカンピロバクターが検出された者の年齢分布を表1に示した。0〜14歳が53.2%を占める。成人では輸入例が多く,20歳以上238例中輸入例は88例(37%)であった。推定感染国はインド・ネパール・パキスタンが多い。また,輸入例では赤痢菌やその他の菌との混合感染例が多いのが特徴である。

伝染病院集計でカンピロバクターが単独で検出された者について他の病原菌感染と比較すると,症状は比較的重く,過半数に血便がみられている(図2)。表2に各抗生剤に対する耐性頻度を示した。第一選択薬剤はエリスロマイシン(EM)である。



図1.月別カンピロバクター検出数
表1.C. jejuni/coli分離症例の年齢分布
図2.感染性腸炎の症状(感染性腸炎研究会資料,1983年)
表2.C. jejuniの各抗生剤に対する耐性頻度(感染性腸炎研究会資料,1984年)





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