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Vol.6 (1985/11[069])

<特集>
インフルエンザ


昨年10月に青森県で初発したB型の流行は1985年1月から2月にかけて東京都,神奈川県,大阪府など大都市を中心として全国に拡大し,その後北海道では3月上旬まで患者発生が続いた。図1は週別のインフルエンザ様疾患集団発生報告の患者発生状況である。B型は1976/77年の中等度流行後1979〜1982年の3シーズンにはA型と混合して流行した。その後1982/83はA(H)型,1983/84年はA(H)型の流行であったので,この季のB型は3シーズンぶりの流行となった。

表1は1983/84と1984/85の2年のインフルエンザウイルスの検出状況である。1984年には患者のピークに一致して1月を中心にA(H)型が多数分離された。同時に1月以降少数ではあるがB型の分離が6月まで報告された。次のシーズンに入り,B型は1984年10月青森で10株分離されたのを初めとして11月には4府県,12月には14都府県,1985年1月には41,2月には48都道府県・指定都市で検出が報告され,このシーズンの全国的なインフルエンザ流行がB型によることを裏付けた。

このシーズンのB型以外のインフルエンザウイルスとしては,A(H)型が1984年11月に1株,1985年には1月から7月までに40株の検出報告があり,さらに9月には東京都北区の中学校の集発から2株が分離されている。WHO疫学週報によると本年春以降の世界各地の分離株はA(H)型が主流なので,今シーズンはA(H)型の流行になると推測される。

インフルエンザウイルスの検出はすべて鼻咽喉由来の検体から発育鶏卵または細胞培養で分離されている。1984年8月〜1985年7月までに報告されたB型1778株中1433株は細胞で分離された(表2)。

過去3シーズンのウイルス分離例について臨床症状(表3)をみると,発熱が約9割,上気道炎が約8割,上気道炎・肺炎が3〜4%にみられるなど傾向はほぼ同じである。分離された年齢(表4)の中心は学童であるが,これ以外の全年齢層からも幅広く分離されている。

昨シーズン流行したB型の抗原分析の結果では(表5),だいたい3種類のウイルスが流行したとみられる。1群はB/香川/1/85,B/宮城/2/85のグループで以前の流行株に対する抗血清とは反応しない。このグループは抗原分析が実施された244株中7株(2.5%)であった。他の1群はB/青森/2/84型株で,これは36株(15%),あとはB/ソ連/100/83型株あるいはB/ノルウェー/1/84型株の類似型で,このグループは82%を占めた。

1985年になって分離されたA(H)型の抗原分析の結果では,A/山形/96/85のようにワクチン株(A/フィリピン/2/82)の抗血清にやや反応の低い株がみられるが,全体として抗原性が大きく変った株の出現はまだ認められていない。



図1.インフルエンザ様疾患患者発生状況(インフルエンザ様疾患集団発生報告週報・厚生省感染症対策室)
表1.月別インフルエンザウイルス検出状況(1983年8月〜1985年7月)
表2.検出方法別インフルエンザウイルス検出状況(1984年8月〜1985年7月)
表3.各シーズンに流行した型のインフルエンザウイルス分離例の臨床症状
表4.各シーズンに流行した型のインフルエンザウイルス分離例の年齢分布
表5.インフルエンザB型ウイルスの交叉HI試験
表6.インフルエンザA(H3N2)ウイルスの交叉HI試験





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