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1983年3月から1984年11月までにニューヨークブルックリンの退役軍人管理医学センターで肺炎球菌ワクチン効果試験研究計画に登録された患者から血清型19Aの肺炎球菌が9株分離された。
これらの菌中6株は定期追跡調査で咽喉培養から検出された。患者は無症状で治療は受けず,その後の培養では肺炎球菌が検出されなかったので菌は不顕性に増殖していたとみられる。他の3分離株は診断用喀痰試料由来で,患者の2人は気管支炎,1人は肺炎だった。3患者とも以前抗生物質で治療されたことがあるが,前回の治療と19A型肺炎球菌分離までの間隔はそれぞれ2,24および19ヶ月であった。2人はエリスロマイシン,1人はトリメトプリム,サルファメトクサゾールの治療を受け,全員抗生物質治療効果を示した。
分離菌はペニシリンG,アンピシリン,オクサシリン,メズロシリン,セファゾリン,セフトリアクソン,テトラサイクリン,クロラムフェニコールおよびトリメトプリム/サルファメトクサゾールに耐性であったが,エリスロマイシン,クリンダマイシンおよびリファムピンには感受性であった。
9人の患者は研究病院の中で互いにある程度接触をもっているが,研究以外では共通の医者に診察を受けていない。研究スタッフの咽頭ぬぐい液からは肺炎球菌は培養されなかった。しかし,分離菌の感受性パターンが同様であることは,この19A型肺炎球菌が順次患者間を通過したか,あるいは共通のフォーカスから感染したことを暗示している。分離株が得られた時期,全患者は外来通院だった。これらからみて,抗生物質耐性の血清型19A肺炎球菌のフォーカスはニューヨークのブルックリンに存在するのかもしれない。
ペニシリンに全く耐性(MIC>1μg/ml)は米国ではまれで,CDCサーベイランスシステムでは5歳女子のペニシリン耐性14型肺炎球菌,および6例の耐性菌感染が確認されている。1979〜84年の分離株ではペニシリンに対し3400分離株中1株のみ全く耐性,3.7%は部分耐性(MIC0.1〜1μg/ml)であった。米国以外ではペニシリン耐性菌はさらに重要で,南アフリカでは多くのペニシリン耐性19A型肺炎球菌による感染がおこっている。侵襲性肺炎球菌は全部検査することがのぞましい。スクリーニングにはオクサシリンディスクが簡単で有効である。
(CDC,MMWR,34,No.35,1985)
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